カーボンニュートラルや省エネといった観点で課題となっているのが廃熱の取り扱いである。国内一次エネルギー供給の総合効率は40%にとどまっており、残りの60%は廃熱として捨てられているのが現状だ。発電所などの集中型エネルギーシステムで発生する大量の廃熱は遠隔の現場に運べないため捨てられてしまう。しかし、コージェネに代表される分散型エネルギーシステムは、現場で発電し発生する排熱も活用できるので、より効率の良いエネルギーの地産地消が可能になる。パナソニック 空質空調社 空調冷熱ソリューションズ事業部 業務用空調ビジネスユニット ビジネスユニット長の小松原宏氏は「しかし実際には、廃熱の利用は現場任せで必ずしも効率良く利用されているとは限らない。当社も、廃熱利用型吸収式冷凍機を提案してきたものの、どんな廃熱が得られるかは現場任せという状況にあった」と課題を指摘する。
この、十分に使いきれていないコージェネ発電時の廃熱を吸収式冷凍機の熱源にすることが、両社の協業の枠組みとなる。実際に、両社の納入物件から見積もったところ、コージェネの廃熱が吸収式冷凍機で冷房に使用されている割合は11%程度にすぎないと試算された。「その上で、もし専用コントローラーでコージェネと吸収式冷凍機を連携できるようにしたらどれくらいの需要があるかを試算すると、中規模施設向けの10年間累計で2000億円という数字が出てきた。そして何より、カーボンニュートラルや省エネで課題を抱えている中小規模事業者にとって最適なソリューションになると考えた」(小松原氏)という。
今回の協業では、コージェネの廃熱を有効に活用する専用コントローラーを共同開発するとともに、それぞれ国内でトップクラスのシェアを持つ吸収式冷凍機とコージェネの販売/サービス体制を基に、双方の商流で直接提案を行い、保守サービスも相互に実施する。まずは、パナソニックの業務用空調ビジネスユニットの拠点である大泉工場(群馬県大泉町)で2022年12月から実証試験を行って、共同開発した専用コントローラーなどのブラッシュアップを進め、2023年4月からの受注開始、2023年7月からの出荷開始を目指す。
また、導入効果として、天然ガスを熱源とする従来型の吸収式冷凍機のみを2台導入している7500m2/100床程度の病院を想定した試算を行っている。ヤンマーの発電容量35kWのコージェネを3台、廃熱利用型と高効率型の吸収式冷凍機を1台ずつ、これらを連携する専用コントローラーを導入することで熱利用率は100%となり、CO2排出量が29%、エネルギーコストが37%削減できるという結果になった。小松原氏は「新たに導入する設備のコストを5〜7年で回収できる計算だ」と強調する。
なお、同じ大阪を本拠とするパナソニックとヤンマーだが、正式に協業するのは初めてのことだ。それぞれが後援するサッカーチームは、パナソニックがガンバ、ヤンマーがセレッソと実業団時代からJリーグに至るまでダービーを競うライバル関係にあることで知られている。小松原氏は「両社にそういうイメージがあるかもしれないが、吸収式冷凍機を扱う業務用空調ビジネスユニットの源流は三洋電機にある。私自身は、三洋電機のラグビーチームが原点のワイルドナイツとセレッソの異業種連携だと捉えている」と述べている。
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