京セラは2022年10月11日、白色レーザーと赤外線レーザーを1つの素子に組み込んだ光源をヘッドランプに使ったナイトビジョンシステムを開発したと発表した。2027年に車載用として事業化することを目指し、研究開発を進めていく。
京セラは2022年10月11日、白色レーザーと赤外線レーザーを1つの素子に組み込んだ光源をヘッドランプに使ったナイトビジョンシステムを開発したと発表した。2027年に車載用として事業化することを目指し、研究開発を進めていく。
白色光は従来と同様のヘッドランプに、近赤外光は白色光を照射しても見つけにくい物体の検出に使用する。それぞれを同じ光軸から照射し、RGB-IRセンサー(カメラ)で得られたカラーの可視光画像と近赤外光画像を組み合わせることで、視界の悪い環境下でも前方の障害物を高精度に検出できるようにする。
ナイトビジョンシステムとして、可視光画像と近赤外光画像から信頼性の高い領域を組み合わせて判断するフュージョン認識AI(人工知能)技術も開発した。AIの精度向上と学習コスト削減のため、学習用の可視光画像から近赤外光画像を自動生成する技術も併用した。
交通事故の中でも死亡事故を減らしていくには、危険な場面でのより高度な検知が求められる。交通事故総合分析センターによれば、夜間の交通事故は、昼間に比べて死亡事故が2.5倍に増える。また、霧が発生しているときは、交通事故全体に対して死亡事故が3.3倍に増える。京セラは可視光と近赤外光を組み合わせたナイトビジョンシステムにより、夜間や霧発生時の検出性能を高める。
光源に使用しているのは、子会社であるKYOCERA SLD Laserが開発したGaN製白色光レーザーだ。KYOCERA SLD LaserはGaN基板から内製できる。KYOCERA SLD Laserでは既に自動車での採用実績があり、より高付加価値な車載向けの製品として、今回発表したナイトビジョンシステムや白色レーザーと赤外線レーザーを1つのセラミックパッケージに収めたデュアル光源を京セラ本体とKYOCERA SLD Laserで開発した。ヘッドランプに2種類のセンサーを内蔵できるため、複数箇所にセンサーを搭載するのに比べて車両のデザイン性も損なわない。
今回使用する白色レーザーは250m先まで投光できるが、人間の目に対する安全基準(アイセーフ)を満たすなどの対策により常用される速度域でもヘッドランプとして使用できる。反射板を使うことでレーザー光を直接照射しない他、レーザー光の強度を分散させるようにした。また、白色レーザーだけをロービームにし、赤外線レーザーはハイビームにするなどにより、歩行者や他のドライバーに与えるまぶしさを抑えることも可能だ。
今後は製品化に向けて、認識アルゴリズムの負荷を軽減する。また、光源単体のコストはLEDの方が競争力があるため、ヘッドランプにセンサーを集約することによる部品点数の削減によって、車両としてのコスト削減に貢献したい考えだ。
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