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» 2022年10月12日 07時00分 公開

日立と産総研が“強者連合”、日本発でサーキュラーエコノミー技術を発信へ研究開発の最前線(1/2 ページ)

日立製作所と産業技術総合研究所は、産総研臨海副都心センター(東京都江東区)内に「日立−産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立した。同連携研究ラボには、日立から約20人と産総研から約20人、合計約40人の研究者が参加し、2025年10月10日までの3年間で10億円を投じる計画である。

[朴尚洙MONOist]

 日立製作所(以下、日立)と産業技術総合研究所(以下、産総研)は2022年10月11日、産総研臨海副都心センター(東京都江東区)内に「日立−産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立したと発表した。同連携研究ラボには、日立から約20人と産総研から約20人、合計約40人の研究者が参加し、2025年10月10日までの3年間で10億円を投じて、従来のリニアエコノミー(線形経済)に代わるサーキュラーエコノミー(循環経済)を実現するためのグランドデザインの策定やデジタルソリューションのプロトタイプの開発、グローバルに展開するための標準化戦略の立案などを進めていく方針である。

日立の小島啓二氏(左)と産総研の石村和彦氏(右) 日立の小島啓二氏(左)と産総研の石村和彦氏(右)[クリックで拡大]

 同日に産総研臨海副都心センターで開いた会見には、日立 執行役社長兼CEOの小島啓二氏と産総研 理事長兼最高執行責任者の石村和彦氏が登壇し、連携研究ラボ設立の狙いについて説明した。小島氏は「この連携研究ラボを起点に、日本発のサーキュラーエコノミー技術を発信していきたい。特にサーキュラーエコノミーのような社会課題の解決に向けた技術開発ではさまざまな技術を総合する必要があり、広範な技術を手掛けるととともに石村氏がイニシアチブをとることで領域融合の研究も積極的に進めている産総研と日立が一体になった取り組みに強い期待を抱いている」と語る。一方の石村氏も「産総研として、これまで得意としてきた研究成果の創出にとどまらず、それらの成果を社会実装するためには企業との協力が必要だと考えており、2022年7月には新たな組織として社会実装本部を立ち上げた。今回の連携研究ラボは、社会実装本部を設立してから最大規模の組織連携プロジェクトとなる。“強者連合”によりサーキュラーエコノミーを実現していきたい」と述べる。

社会実装を目指す産総研の企業との協業体制 社会実装を目指す産総研の企業との協業体制[クリックで拡大] 出所:産総研

「つながる工場モデルラボ」でソリューションを開発

 日立−産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボの研究テーマは3つある。1つ目は「循環経済社会のグランドデザインの策定」だ。CO2排出量の削減を目指すカーボンニュートラルは、関連するさまざまな技術の実現時期として2030年がめどになっているが、資源循環をはじめより複雑な技術とバリューチェーンの融合が求められるサーキュラーエコノミーの実現は2050年を実現のめどにした取り組みが各国で進み始めている。そこで、2050年におけるサーキュラーエコノミーのあるべき姿からのバックキャストなどを通して循環経済社会のグランドデザインを描き、業種を横断する評価方法や指標を策定する。

「循環経済社会のグランドデザインの策定」の概要 「循環経済社会のグランドデザインの策定」の概要[クリックで拡大] 出所:日立

 2つ目のテーマは「循環経済向けデジタルソリューションの開発」である。日立のデジタルソリューション群「Lumada」では、リアル空間である現場から得たデジタルデータをサイバー空間上に集約して相互に連動させるサイバーフィジカルシステム(CPS)を重視している。サーキュラーエコノミー向けでも、このCPSのコンセプトをベースに、環境データやトレーサビリティーデータを活用することで、生産活動における設計、調達、製造から使用、回収までのバリューチェーンの各プロセスでのリサイクルや資源循環を促進するソリューションを開発する。サーキュラーエコノミーに先行しての実現が見込まれるカーボンニュートラル向けソリューションと両立する統合ソリューションとしての開発を進めていく方針だ。

「循環経済向けデジタルソリューションの開発」の概要 「循環経済向けデジタルソリューションの開発」の概要[クリックで拡大] 出所:日立

 ユースケース案としては「トレーサビリティーを利用したESGレポーティング」「低環境負荷を実現する製造スケジューリング」「リサイクル材の活用を前提とした設計・製造」「使用履歴を考慮した最適な資源循環方法」の4つを想定している。3年間の研究期間において、日立社内で活用可能なプロトタイプの開発を完了させ、これをロールモデルとして多くの企業にサーキュラーエコノミーを広げるための基盤としたい考えだ。

「循環経済社会のグランドデザインの策定」では「つながる工場モデルラボ」を活用する 「循環経済社会のグランドデザインの策定」では「つながる工場モデルラボ」を活用する[クリックで拡大] 出所:日立

 なお、「循環経済向けデジタルソリューションの開発」では、産総研臨海副都心センターのCPS棟内に産総研が2019年4月にオープンした「つながる工場モデルラボ」を活用する。同ラボは、さまざまな工作機械やAGV(無人搬送車)などをLANで接続することでさまざまなデジタルデータを収集し見える化するとともに、産総研の他拠点の装置の状態も確認できるようになっている。これにより、工場内だけでなく、工場外にあるバリューチェーンとの連携を想定した開発も可能になるという。

「つながる工場モデルラボ」を公開「つながる工場モデルラボ」を公開 会見後には「つながる工場モデルラボ」を公開した。さまざまな工作機械の他、スマート工場で重要な役割を果たすといわれているAGVも設置されている[クリックで拡大]
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