日本のモノづくりの現状を示す「2022年版ものづくり白書」が2022年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2022年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第3回ではDXのカギとなるデジタル人材の確保や育成に加えて、世界的に注目されているカーボンニュートラルへの取り組みを掘り下げたい。
2022年5月に公開された「令和3年度ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2022年版ものづくり白書)を読み解く本連載。第1回では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響も含め、製造業における生産などの現状やサプライチェーン強靭(きょうじん)化の取り組みを確認し、第2回では2022年版ものづくり白書において、日本の製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)がどのように進展したとされているかを見てきた。
第3回となる本稿では、DXのカギとなるデジタル人材の確保や育成に加えて、世界的に注目されているカーボンニュートラルへの取り組みを掘り下げたい。
第2回では、日本の製造業においてDXの重要性が理解されつつあることに触れた。実際の調査結果でも、モノづくりの工程や活動においてデジタル技術を「活用している」とした企業は67.2%となっており、「その他(活用してない、又は該当する工程・活動がない)」とした企業を上回っている(図1)。
モノづくりの工程や活動においてデジタル技術を活用しているとした企業(以下、デジタル技術活用企業)において技術導入の効果をみると、「生産性の向上」(55.6%)の割合が最も高く、次いで「開発・リードタイムの削減」(41.5%)、「作業負担の軽減や作業効率の改善」(37.3%)となっている(図2)。デジタル技術活用企業は生産、作業工程などにおける効率化や簡素化を実現し、製品の品質や生産性の向上につなげている様子がうかがえる。
一方で、デジタル技術の活用課題については「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」を挙げる企業の割合が最も多い。次いで「デジタル技術の活用にあたって先導的役割を果たすことのできる人材の不足」「デジタル技術導入にかかる予算の不足」の順となっており、デジタルに関する知識や人材の不足が顕在化していることが分かる(図3)。
デジタル技術活用企業が、技術活用を進めるために実施した人材育成、能力開発の取り組み内容としては「作業標準書や作業手順書の整備」(40.0%)が最も高く、次いで「OFF-JTの実施」(36.0%)、「身につけるべき知識や技能の明確化」(30.9%)の順となっている(図4)。
デジタル技術活用企業が行った、デジタル人材確保の取り組みとしては「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」(48.5%)の割合が最も高く、次いで「デジタル技術に精通した人材を中途採用する」(26.6%)となっている(図5)。デジタル技術活用企業においては、外部人材の中途採用よりも自社の既存人材の育成に力を入れていることがうかがえる。
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