ニコンがドイツの金属3DプリンタメーカーSLMを買収、パウダーベッド方式も追加へ金属3Dプリンタ

ニコンは2022年9月2日、ドイツの金属3DプリンタメーカーであるSLM Solutions Group(以下、SLM)を買収すると発表した。SLMの増資を引き受ける他、1株当たり20ユーロの現金対価による公開買い付けを行う。加えて、SLMが実施する転換社債の公開買い付けも行い、100%子会社化を目指す。取引総額は6億2200万ユーロ(840億円)になる見込みだという。

» 2022年09月06日 06時30分 公開
[MONOist]

 ニコンは2022年9月2日、ドイツの金属3DプリンタメーカーであるSLM Solutions Group(以下、SLM)を買収すると発表した。SLMの増資を引き受ける他、1株当たり20ユーロの現金対価による公開買い付けを行う。加えて、SLMが実施する転換社債の公開買い付けも行い、100%子会社化を目指す。取引総額は6億2200万ユーロ(840億円)になる見込みだという。

 SLMは1996年創業のドイツ・リューベックに本社を置く金属3Dプリンタ専業メーカーである。フォーチュン500企業を含む自動車、医療、電機、宇宙、航空産業など150以上の顧客に納入実績があるとしている。

photo SLMの概要[クリックで拡大] 出所:ニコン

 ニコンでは新規事業として「光応用技術で、ものづくりの世界に革新をもたらす」を掲げ、デジタルマニュファクチャリング事業の強化を進めている。その中でも材料加工領域は、ニコン独自の技術力が発揮できる領域として強化を進める方針を示す。2019年4月には同社初の金属光加工機「Lasermeister 100A」をリリースしたが、今回のSLMの買収もこうした金属向けの積層造形技術強化の一環となる。

 ニコン 代表取締役 兼 社長執行役員の馬立稔和氏は「金属3Dプリンタは、ニコンが100年以上にわたって培ってきた光利用技術が活用できる領域だ。加えて、半導体露光装置などで培った精密な位置決め技術やモニタリングする画像技術なども生かせる。ニコンでは、金属3Dプリンタの内、DED(Directed Energy Deposition)方式を採用した光加工機を開発、販売しているが、今回の買収により現在主流となっているL-PBF(Laser Powder Bed Fusion)方式も獲得できる」と買収の価値についてコメントしている。

photo ニコンのデジタルマニュファクチャリング事業戦略[クリックで拡大] 出所:ニコン

 買収は特別目的子会社であるNikon AMを通じて行い、まず2022年9月に1株当たり20ユーロでSLMの増資を引き受け、発行済み株式の10%となる普通株式を取得する。その後、同年10〜11月にかけて、公開買い付けを1株当たり20ユーロで実施する予定としている。さらに。同年10〜11月にかけて、SLMが発行した所定の転換社債を対象として別途公開買い付けを行う。SLMのスーパーバイザリーボードおよびマネジメントボードは、この公開買い付けを歓迎し合意している。SLMの株式と転換社債を保有する投資会社2社とSLM 創業者のHans-Joachim Ihde氏が今回の取引に賛同して公開買い付けに応募する契約を結んでおり、ニコンはSLMの完全希薄化後全株式の61.1%を既に確保しているという。

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