永守氏は関氏について「自動車業界での経験を評価して迎えたが車載事業は悪くなる一方で、株価も下がった。世の中、この程度の経営力で会社を経営できてしまうのだなと思った。利益率が3%、5%で喜ぶ会社であればこの経営者でいいかもしれないが、われわれが目指す利益率は15%だ。利益率が3%の会社の25倍努力してもらわないといけない。車載事業は環境として逆風で厳しかったというのもあるが、日本電産は創業当初からそういった状況でも高い収益を上げてきた歴史がある。実際に車載事業以外は全て計画を達成している」と業績悪化の責任を指摘した。
コロナ禍でサプライヤーの事業環境は厳しい。自動車メーカーの生産調整の影響に加えて、エネルギー価格や物流費、材料価格の高騰に対応しながら、将来技術への投資の継続も求められる。さらに、日本電産では黒字化前の駆動用モーターも車載事業の業績に含まれているが、業績悪化の責任を永守氏は重く見ている。
また、自動車メーカー出身の関氏がサプライヤーの文化になじまなかったことにも言及した。
「日本電産はティア1、ティア2のサプライヤーであり、自動車メーカーと違ってサプライチェーンの頂点に居るわけではない。車載事業が悪化するのを見ていて、自動車メーカーとサプライヤーの仕事の進め方が違うのを実感した。サプライヤーは客先や工場に通い、バッタのように頭を下げて会社を作っていく。現場でも社員より早く出勤して社員を待ち構えるなど、時間をかけて過ごすべきだが、自動車メーカーではそういった経験がなかったのだろう。以前の会社の習慣が悪いとは言わないが、日本電産のルールに合わせてもらっていれば違った姿になったかもしれない」(永守氏)
新社長の小部氏も関氏の印象を「お客さま対応は苦手なのだろう」と述べた。
自動車メーカーとサプライヤーの企業文化の違いだけでなく、関氏の姿勢も永守氏の評価は低い。
「ある程度同じ価値観を共有できないと、厳しい仕事に向かっていくことはできない。私の経営手法をまねしたり学んだりしてほしいと何度も頼んだが、受け入れてもらえなかった。私は50年間会社を経営してきて、倒産しかかった会社も再建してきた。そこから学ぶべきことは多かったはずだが、プライドが許さなかったのではないか。私の指導を受けて実績が出てから自分の個性を出せばよかったのだが」(永守氏)
永守氏は「これまで、買収した赤字企業であろうとこちらから経営幹部をクビにしたことはない。私のやり方を学んでもらえば会社は必ずよくなるといって厳しく指導してきたが、ついてきてくれたからこそ結果が出ている。関氏のように逃げられてしまっては教育もできない」と関氏への支援を惜しまなかったことを強調した。
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