台湾のAllxon(アルクソン)が、IoTデバイスの運用と管理を行う「Allxon DMS」の日本国内における事業展開を強化する。Allxon DMSは、エッジAIボード「Jetson」のOTAが可能であるとともに、遠隔からIoTデバイスの強制再起動が行えることを特徴としている。
台湾のAllxon(アルクソン)は、IoT(モノのインターネット)デバイスの運用と管理を行う「Allxon DMS(Device Management Solution)」を展開するSaaSプロバイダーである。2019年9月に創業した同社は、産業用コンピュータ大手のアドバンテックなどとの提携や、NVIDIAのエッジAIボード「Jetson」の開発エコシステムへの参加を経て、欧州とアジアを中心にAllxon DMSの導入実績を拡大している。創業から約2年後の2021年12月には、Allxon DMSの登録デバイス数で1万台を達成した。
Allxonの創業者でCEOを務めるAlex Liu氏は「社会へのIoTデバイスの導入が広がる中で、よりインテリジェントな機能を持たせるためにAIを組み込みたいという要望が強くなっている。そして、IoTデバイスに組み込むエッジAIは、クラウドとの連携による機能向上も期待されている。Allxon DMSは、高性能のエッジAIボードであるJetsonベースのIoTデバイスに対してOTA(Over the Air)でのアップデートを可能にする数少ないSaaSソリューションであり、このことが高く評価されている」と語る。
例えば、台湾国内のライトレールの駅で運用されているスマートシティーディスプレイは「Jetson Xavier NX」を搭載しており、駅舎内でさまざまな情報を発信するためのサイネージなどとして活用されている。そして、Allxon DMSによって、デバイスのオンライン状態の監視、SSHを用いた暗号通信、画面のキャプチャーだけでなく、OTAによるデバイスのアプリ更新も可能になっているのだ。
Jetsonへの対応に加えて、Allxon DMSが高く評価されているのが、IoTデバイスのOOB(アウトオブバウンド)管理を可能にする電源管理モジュールの提供である。
PCやスマートフォン、そしてIoTデバイスなどネットワークに接続される機器の管理手法は、完全にソフトウェアベースで行うINB(インバンド)管理と、ハードウェアの機能を活用するOOB管理の2種類がある。例えばインテルは、エンタープライズ向けPCのプラットフォームである「vPro Enterprise」を活用したOOB管理についての提案行っている。
IoTデバイスを遠隔で管理する上で、最も大きな課題になるのが“デバイスのフリーズ”への対応である。もしINB管理がベースのIoTデバイスがフリーズした場合、再起動などによるそのデバイスの復旧については、サポート人員を派遣するなどして手動で対応しなければならない。「創業当初のAllxon DMSはINB管理が基本になっていた。しかし、OT(制御技術)を対象に事業を広げていく上で、顧客から強い要望があったのがOOB管理だった。そこで、さまざまなIoTデバイスと連携できるOOB電源管理モジュールの提供を2021年2月に開始した」(Liu氏)という。
Allxonは日本国内におけるAllxon DMSの事業展開を強化していきたい考えだ。国内でも導入が広がりつつあるJetsonのOTAが可能で、国内メーカーが高いシェアを持つ産業機器分野で重視されるOOB管理にも対応できるといった強みを生かせると見込む。
2020年9月には、Allxon、マクニカ、アドバンテックの3社で、日本国内向けにエッジAIのリモート管理を拡大するための協業を発表している。まずは、マクニカが注力するIVA(インテリジェントビデオ解析システム)を活用したスマートシティー分野での提案を先行して進めつつ、小売業やロボティクスなどにも展開を広げていく方針である。
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