IoTデバイスに不可欠な「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」の役割経験ゼロから始めるIoTデバイス入門(前編)(1/2 ページ)

IoTデバイスの基本的な構成から、必要な認証、デバイス選定までを前後編で解説する本連載。前編では、基本的な構成の中でも、通信に関する機能を持つ「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」について詳しく解説する。

» 2021年02月08日 10時00分 公開

 近年、より身近なワードとして普及してきたIoT“Internet of Things”。いわゆるコンピュータなどの情報機器だけがインターネットにつながるのではなく、世の中にある多種多様な物体があらゆる環境においてインターネットに接続し、相互に通信することで、今まで不可能であったデータの収集や分析あるいは物体の自動制御、遠隔操作などを行う仕組みやシステムのことを指します。

 このIoTは大きく分けて、デバイス、ネットワーク、クラウドの3要素から成り立っており、その中で最も現場に近いところで稼働し、多種多様な役割を果たすのがデバイスです。デバイスはIoTには不可欠な要素ですが、ハードウェアの世界は特にネットワークやクラウドのエンジニアから見ると少しとっつきにくい部分があるのも事実です。本記事ではそんなIoTデバイスの基礎知識を知りたいという方に向けて、基本的な構成から必要な認証、デバイス選定までIoTデバイスに関する内容を前後編の2回に分けて、体系的にご紹介します。

IoTはデバイス、ネットワーク、クラウドの3要素から成り立っている IoTはデバイス、ネットワーク、クラウドの3要素から成り立っている(クリックで拡大)

IoTデバイスの基本構成

 一般的なハードウェアとIoTデバイスの違いは「通信機能を持つ」ことです。Wi-Fi、Bluetooth、セルラー、LPWA(低消費電力広域)ネットワークなどの通信を用いるため無線制御が必要となります。今回は「モバイルデータ通信」とも呼ばれるセルラー通信を行える無線デバイスを例にして、IoTデバイスの基本構成を解説してきます。

 セルラー通信が可能なIoTデバイスは大きく分けて以下の4つの要素で構成されます。

  • アンテナ
  • 無線モジュール
  • SIMカード
  • HOSTデバイス
IoTデバイスを構成する4つの要素 IoTデバイスを構成する4つの要素(クリックで拡大)

 まず、IoTデバイスは電波を検出する「アンテナ」を介して信号の送受信を行います。次に、送受信された信号は「無線モジュール」で信号の変復調や認証、信号の処理が行われます。「無線モジュール」内にはアナログ信号を扱うRF IC、AD(アナログ−デジタル)/DA(デジタル−アナログ)変換や通信プロトコル処理、HOSTデバイスとのやりとりを行うBase band IC(ベースバンドIC)/MACが大きな役割を果たします。他にもベースバンドICのファームウェアを格納するEEPROMや、HOSTデバイスから電源を受け取るためのDC-DCコンバーターなど多くの部品から成り立っています。

 また、セルラー通信の場合「SIMカード」と連携することで回線の利用者の認証などが行われます。「無線モジュール」で処理されたデータは「HOSTデバイス」に連携され、さまざまなアプリケーションと連動しながらデバイスとして必要な処理を行います。このようにIoTデバイス内ではそれぞれの構成要素が独立した役割を果たすことによって全体として機能するようになっています。

 ここからは、IoTデバイスの通信機能と深い関わりを持つ「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」についてより詳しく解説していきます。

アンテナの役割

 アンテナはIoTデバイスの要素の中でも一番イメージしやすい構成要素ではないでしょうか。電気信号を電波として送出する、あるいは空中から飛んできた電波を受信し電気信号に変換することができる装置です。無線通信において電波の入口または出口となる非常に重要な要素となります。

アンテナでどんな周波数の電波を扱うかが決まる

 このアンテナによってどんな周波数の電波を送受信できるかが決まります。空中にはセルラー通信だけでなくさまざまな電波が飛び交っています。その中からデバイス自身が利用可能な周波数の電波を取り扱えるのはアンテナが持つこの特性のおかげです。逆に言うとアンテナごとに取り扱える電波の周波数は決まっているため、デバイスで取り扱いたい周波数にあったアンテナを利用する必要があります。

「利得」と「指向性」

 また、アンテナの特性として重要なものに「利得」と「指向性」があります。

 利得とは、同じ強さの電波に対して対象のアンテナで受信した場合と、基準アンテナと呼ばれるアンテナの受信する能力の基準となるアンテナで受信した場合の差を示す値です。この基準アンテナには、「半波長ダイポールアンテナ」と「アイソトロピックアンテナ」の2つの種類があります。「半波長ダイポールアンテナ」との差を示したものが相対利得と呼ばれ、単位はdBまたはdBdが用いられます。「アイソトロピックアンテナ」との差を示したものは絶対利得と呼ばれ、単位はdBiが用いられます。このように基準となるアンテナとの受信電力差を利得と定義することでアンテナがどのくらいの強さの電波を送受信できるかを示すことができるのです。一般的に利得が高ければより弱い電波を受信可能であるため、高性能なアンテナであると言われます。

 では、利得を高めるためにどのような工夫をしているのでしょうか。その答えの一つが「指向性」です。アンテナの送信を例にとって説明をします。電波を送信するための電気エネルギーと電波として空中に出ていくエネルギーは同じでなければなりません(送電線のロスなどは考慮しないものとする)。その中でアンテナの利得を大きくするために、電波がある方向に集中するようにアンテナを設計することで特定の方向に強く電波を飛ばすことができます。ちょうど水道につながれたホースの先をつまむと勢いよく水が出ていくのと同じイメージです。

 このときにどの方向に強く電波が飛んでいくかの特性示すのが「指向性」です。指向性を高めると利得が大きくなりますが、やりすぎると特定の方向以外に電波が飛ばない、あるいは特定の方向からしか電波を受信できないことになります。このため、取り扱う電波の特性によって、どのような「利得」や「指向性」を持ったアンテナを選ぶかが通信の安定性に寄与します。ある程度、電波が飛んでくる方向が絞れる場合には指向性の高いアンテナを使って利得を高めることが可能ですし、電波がランダムな方向から飛んでくる場合は指向性を低くしてあらゆる方向の電波を受信可能にする必要があります。

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