次に登場するのが「Hack RF One」です。LPCマイコンとFPGAを組み合わせた回路構成となっています。もちろんSDR#からも使えますが、何と言ってもこのHack RF Oneの特徴はSDR専用のソフトウェアツールキットである「GNU Radio」を用いれば受信だけでなく送信もできるところでしょう。GNU Radioは、信号処理系とそのビジュアルプログラミングを行うための開発環境であり、オープンソースで開発されているので日々機能アップが図られています。
詳しくはHackRF Oneの公式ドキュメントサイトをご覧ください。
筆者が数年前に海外サイトで購入した時の価格は70米ドル程度だったのですが、最近ではその倍以上の価格になっています。半導体不足のせいでしょうか。
注意して頂きたいのは、送信ができるということなので、国内の電波法を順守する必要があります。技術適合の観点で言えば、ベースバンドばかりではなくRFの部分もプログラミング可能なので、その部分を書き換えるとその都度、技術適合証明の取り直しが必要な場合もあります。電波的にクローズな環境で実験する方が無難でしょう。
筆者が第4世代のSDR技術と目するのがHFトランシーバー「μSDX」です。クロックジェネレーターとアナログスイッチ以外の機能は全て、Arduinoなどでも用いられている8ビットMCU「Atmega328」でSDRの機能を実現しています。また、クロックジェネレーターは、連載第2回で紹介した「Si5351A」を用いています。既存のSDR技術に基づくHFトランシーバーの価格は200米ドルを切ることはなかったのですが、μSDXの活用により100米ドルを切る製品も出てきています。
初めてμSDXの存在を知ったとき、正直「やられたな」という気分になりました。筆者も似たようなことを以前考えていたのですが、一歩及ばず脱帽です。実はSi5351Aも、μSDXの回路を見て知りました。この回路図を見るたびに悔しい気持ちになるのですが、その一方でSDR技術のすがすがしいブレークスルーを感じさせます。
μSDXについてはまだ全てをハックしきれていませんが、そのあかつきには読者のみなさんと共有したいと思っています。なお、μSDXに関する情報は全てオープンソースで公開されています。
というわけで、筆者の個人的な思い込み満載のSDR史観を語らせていただきました。本記事を書き終えて改めて感じることは、SDRの発展を支えてきたのがオープンソース、オープンハードの精神であることですね。筆者も微力ではありますが、この分野に貢献していきたいと思いました。それでは次回もお楽しみに!
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