これから数回に渡り、今後、IoTエンドデバイス開発に大きな意味を持つと思われる、安価な技適認証済みWi-Fiモジュールを用いた作例を紹介していきたいと思います。
Wi-Fi機能とCPU、それに各種周辺インタフェース、TCP/IPスタックを集積したSoC(System-on-a-chip:1つの半導体チップに必要なシステム一式を集積したデバイス)が安価に出回るようになってきました。
今までコンピュータリソースの乏しいマイコンからWi-FiやBluetoothを利用しようとすると、ワイヤレスモジュール自体にプロトコルスタックを搭載する必要があり、マイコン本体と比べかなり高コストのソリューションとなることは避けられませんでした。
ですが、最近では500円前後という価格で技適(後述)製品がメジャーな業者から販売されるようになり、Wi-Fiを用いたIoTのセンサーノード(エンドデバイス)を安価に製作できるようになりました。これらモジュールの多くはマイコンのワイヤレス周辺デバイスとして動作するだけでなく、内蔵されたCPUを用いた単独ソリューションとしても機能する点も注目です。
今回はWi-Fiモジュール「ESP8266」を題材にブレッドボードへの配線、ATコマンドでのモジュール動作確認までを紹介したいと思います。
Wi-Fiモジュール「ESP8266」はEspressif Systemsより提供されているワイヤレスSoCです。同社は上海の張江ハイテクパークに本社を置くWi-FiおよびBluetoothのSoCを提供するファブレスの半導体メーカーです。研究開発、デザインおよびマーケティングのみを行っています。
ESP8266はワイヤレス機能に加えGPIO、I2C、ADC、SPI、PWMなどの周辺デバイスを内蔵しています。IEEE 802.11b/g/nが使用可能で、WPAおよびWAP2をサポートします。CPUは80MHzで動作し、64KBの命令を格納するRAMと96KBのデータRAMを持ちます。
また64KBのブートプログラム用のROMを持ちます。CPUはRISCアーキテクチャの32bitプロセッサですが、i386やARMなどのメジャーにアーキテクチャではありません。Tensilicaにより提供された106micro Diamond Standard Coneが用いられています。
このSoCを用いたモジュールが各国で製造されており、その1つが「ESP-WROOM-02」です。日本国内では特に微弱な電波を発する機器以外は、使用者が国の機関に免許を申請する必要がありますが、「技術基準適合証明」(いわゆる技適)を得ている製品は免許なしで使用できます。
このESP-WROOM-02は技適認証済み製品ですので、本連載では日本での入手性および法令順守の観点からこのモジュールを例に作例などを紹介していきます。他のESP8266を用いたモジュールでも本連載で掲載する回路やツールやプログラムなどは基本的に利用可能とは思いますが、国内での利用に際してはそのモジュールが技適を得ているか必ず確認してください。
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