シーメンスヘルスケアは、次世代CTと呼ばれるフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha(ネオトム アルファ)」について、東海大学医学部付属病院の導入事例を紹介した。NAEOTOM Alphaは2022年1月に国内における製造販売認証を取得しており、同病院に国内初号機が導入された。
シーメンスヘルスケアは2022年8月9日、オンラインで会見を開き、次世代CTと呼ばれるフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha(ネオトム アルファ)」について、東海大学医学部付属病院の導入事例を紹介した。NAEOTOM Alphaは2022年1月に国内における製造販売認証を取得しており、同病院に国内初号機が導入された。
NAEOTOM Alphaは、シーメンスヘルスケアのドイツ本社であるSiemens Healthineersと国内子会社のアクロラドが共同開発したフォトンカウンティング検出器を搭載するCTである。従来のCTの検出器は、患者に照射したX線を光に変換してからさらに電気信号に変化することによりX線の検出を行っている。一方、フォトンカウンティング検出器はX線を直接電気信号に変換しており、X線の光子1つ1つのエネルギー情報を検出できる。これによって、従来のCTと比べて高精細で多彩なコントラスト表現が可能な検査画像の取得が可能になった。
東海大学 医学部 専門診療学系 画像診断学 教授の橋本順氏は「1967年に構想が発表され1972年に1号機が発表されたCTだが、これまでもヘリカルCTやマルチスライスCT、デュアルエナジーCTといった形で進化を遂げてきた。フォトンカウンティングCTもCTの新たな時代を開くことになるだろう」と語る。
フォトンカウンティングCTは「高精細な画像」「被ばく量の大幅な低減」「物質選択的なイメージングが可能」という3つの特徴がある。高精細な画像については、骨の内部構造である骨梁の状態、中耳や内耳の細かく複雑な構造、肺の中にある砂粒のような細かな病変を確認できる。「人体で最も小さい骨といわれる中耳のアブミ骨も見分けられる」(橋本氏)という。
橋本氏が国内へのフォトンカウンティングCTの導入で大きな効果が得られると考えているのが被ばく量の大幅な低減である。日本は人口1人当たりのCTの台数が世界で最も多いこともあり、CTによる被ばく量が世界平均の6倍、欧米の3倍と突出している。橋本氏は、副鼻腔の低線量検査の事例を示し、「フォトンカウンティングCTであれば被ばく量を従来のCTの15分の1に抑えられる」と強調する。
また、東海大学医学部付属病院 診療技術部 放射線技術科 係長(CT部門)の吉田亮一氏も「従来のCTでは体幹撮影に5〜10秒かかっていたが、フォトンカウンティングCTは1秒未満で完了する」と説明する。日本政府も被ばく量の低減を重視しており、今後フォトンカウンティングCTによる効果がエビデンスとして蓄積されていけば「従来のCTに対して診療報酬を上げることもあり得るだろう」(橋本氏)という。
物質選択的なイメージングにおける事例としては、既に物質ごとの高エネルギーX線と低エネルギーX線の吸収率の違いを利用して実現されているデュアルエナジーCTを挙げた。フォトンカウンティングCTを使えば、従来のデュアルエナジーCTと比べて被ばく量を減らせるとともに位置ずれのない高い精度を実現できる。例えば、従来のデュアルエナジーCTでは動脈の石灰化部と造影剤の違いを見分けることは難しかったが、フォトンカウンティングCTによって石灰化部を明確に見分けられるようになった。「石灰化部を取り除いた画像によって血管の狭窄(きょうさく)度を正確に確認し、血管の内腔をしっかり把握した上でカテーテルを挿入できるようになる」(吉田氏)。
また、デュアルエナジーCT以外でのエネルギー情報の利用としては。アーチファクト軽減やコントラスト改善が可能なモノクロマティックイメージや、金、白金、ガドリニウム、ヨードなどのさまざまな物質の選択的な強調、分離が挙げられる。橋本氏は「MRIに迫るようなコントラスト分解能の高さが得られる。ヨードマップを使えば腫瘍の視認性向上にもつなげられる」と述べる。
なお、NAEOTOM Alphaが東海大学医学部付属病院で稼働を開始してからまだ1カ月半ほどということで、現在は利用実績を積み重ねていく段階にある。シーメンスヘルスケアとしては、がん、心疾患、脳血管疾患という三大疾病の治療に役立つことを示しつつ、国内市場への浸透を図りたい考えだ。
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