原価の概念は、「製品の生産および販売のために消費される経済価値をいう」と原価計算準則に規定されています。原価計算基準では、原価を「経営目的に関連した経済価値の消費である」「経営において作り出された給付に転嫁される価値で、その給付にかかわらせて把握されたもの」と説明しています。
製造業のモノづくりは、その範囲が広く業種の違いによって生産に供する機械設備も大きく異なっていますので、それぞれ個別の仕様で作られています。そのため、製造現場では種々の機械設備を使う必要があります。
これらの機械設備の設備投資に必要な投資金額は、製造する製品個々の原価に反映させて、売価から回収していく必要があります。そして、その回収をどのように原価に反映させるかが、投資する機械設備の形態によって異なることになります。
購入金額が比較的高価で、工場のいろいろな製品に汎用的に使え、固定資産として管理する設備は間接経費の中の減価償却費として扱います。一方、購入金額が比較的廉価で、製品固有の設備、例えばツールや治工具類などについては、直接経費や製造間接費の中の消耗品、型治工具費などの費目として扱われるのが一般的です。また、設備の維持管理費用や損害保険費用については、製造間接費の保守費用や管理費、一般費の損害保険費などの費目として扱われます。
従って、設備費用の削減を検討する場合には、改善によって減価償却費がどの程度下がったかだけではなく、その設備全体に発生する費用がどのように変化したかを理解して最適な改善策を選択し、全体最適を指向した費用の削減を行っていくことが大切です。
建物や機械設備など、企業が長期間にわたって利用する資産を購入した場合、その購入価額をいったん資産として計上した後、その金額を資産の耐用年数よって規則的に費用として配分される金額のことです。
減価償却費(Depreciation Expense)は、「設備投資された有形固定資産は、土地を除き、いずれも時の経過とか、使用とか、陳腐化により毎年その価値を減じていく。この金額を減価償却といい、計算方式として定額法と定率法がある」と定義されています。
つまり、減価償却費とは、設備耐用年数の会計期間中に利用、消費された建屋や機械設備などの有形固定資産サービス力を金額で表現する手続きであって、固定資産の投資額でもある取得原価から見積もり残存価格を差し引いた被償却額を見積もり耐用期間中の各会計年度に費用として配分します。その配分額が均等な場合が定額償却法、一定比率の場合が定率償却法です。定率償却法の方が早い時期に多く償却できる特徴があります。
工場など生産部門で生じた減価償却費は、製品の製造原価に含められ、販売や管理部門で生じた減価償却費は、販売費および一般管理費として売上高から控除します。減価償却費は支出を伴いませんので、同額だけの資金が企業内部に留保されるという財務的効果を持っています。
減価償却は、機械設備に投資した費用について、その機械設備が対象とする製品を生産し続けている期間で製品原価に配賦して回収するというものなので、対象となる機械設備がどのくらいの期間使われるかによって決まる償却期間を決めなければなりません。電子機器製品のように、製品寿命が数年でモデルチェンジを繰り返す製品では、機械設備もすぐに不要になってしまいますので、短期間で減価償却を終えなくてはなりません。
例えば、工場建屋などは製品が変わって設備が入れ替わっても長年にわたって利用され続けますので、長い期間で減価償却をする方が製品原価に配賦する額が少なくて済みます。あまり細かく償却期間を分けても管理が面倒になるだけですから、多くの企業では、建屋やユーティリティー設備などは長期償却、一般設備は中期償却、短寿命製品対応設備は短期償却で運用しています。
償却期間を決めると、その償却期間内で所定の期間内にどのような割合で製品原価への配賦を実施するかの方法を決めなければなりません。その償却方法として、定率償却法と定額償却法があります。
図1と図2に示しましたが、定額償却法は固定資産の耐用年数に応じ、単純に総額を償却期間で割って毎期均等額の減価償却費を製品原価へ配賦を行う方法で、比較的製品コストや利益率が安定している製品に向いていて、作れば売れる大量生産製品によく利用される方法です。
定率償却法は、新製品の製造を開始した初期段階の利益率が高いうちに、より多くの金額を償却しておき、徐々にコスト競争が激化することによって製品売価も下がって利益率が悪化すると同じく償却費の負担も少なくて済むようなことを考えなければならない場合に適用します。固定資産の耐用年数に応じ、毎期、期首末償却残高に一定率を乗じて減価償却費を計算する方法です。最近では定率償却法を採用している企業が多く見られます。
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