最少化の取り組みは、「理論値エナジー活動」によって削減すべきエネルギーを洗い出す。具体的には、材料の形や質を変えるのに必要なエネルギーを「価値エネルギー」、設備で最低限必要なエネルギーを「準価値エネルギー」とし、それ以外を「無価値エネルギー」とする。エネルギーの価値の判断では各種計測器を活用する。無価値エネルギーをゼロに、準価値エネルギーを最少化していく。エネルギーの価値を基にサイクルタイムの短縮や寄せ止め、設備の自動停止など工場全体の効率改善を図っていく。さらに、今後の設備更新では導入コストとのバランスを取りながら、エネルギー消費を30%以上削減することを条件とする。
鋳造や塗装など、エネルギー消費が特に大きい工程では新技術を導入する。鋳造ラインでは2022年から超薄肉ダイカスト鋳造機を導入する。油圧機構をサーボモーターによって電動化する他、排熱回収により消費エネルギーを半減させた。設備メーカーと理論値エナジー活動を推進して仕様を作り込んだ。高速鋳造によって生産性や品質の向上を図る。
2024年に導入する塗装ラインでは、化石燃料由来の蒸気や都市ガスを使用しないカーボンニュートラルな塗装を実現する。前処理や塗装ブースでは、蒸気の加熱をヒートポンプに置き換える。低温焼き付け塗料の開発による低加温化や水素バーナーの活用も検討している。これにより、30%以上の省エネを目指す。
「クリーン化」では、CO2フリー電気の導入比率をグローバルで2024年に24%、2030年に85%、2035年に92%と、段階的に引き上げていく。現在のCO2フリー電気の比率はグローバルで3%にとどまる。
日本国内では、本社管轄の全ての事業所に対して2022年7月からCO2を排出しない水力発電の「静岡Greenでんき」を導入する。海外拠点では、2030年までにCO2フリー電気を導入する。国内外のグループ会社も再エネの導入を順次進める。事業所での太陽光発電設備も導入を進め、自社由来の再エネ比率も高めていく。
こうした取り組みを重ねた上で削減しきれなかったCO2は、さまざまな技術でオフセットする。具体的には、回収したCO2によるメタンや炭素素材の生成、植林、カーボンストレージ、森林吸収などのクレジット購入などを想定している。将来の技術動向によって選択肢は変わってくるとみているが、関連技術は2030年ごろに大きくブレークすると期待を寄せる。水素バーナーへの期待も高い。
日産の工場はどう変わるのか、国内外でIoT本格導入とロボット活用拡大
電動車100%へ330億円を投資した日産・栃木工場、開発中の燃料電池は定置用で活躍
太陽光を青色の光に変換して光触媒の効率アップ、東工大と日産が人工光合成
トヨタが描く“トヨタらしいモノづくり”と、先進デジタル技術の使いどころ
トヨタが世界初の水素バーナーを開発、国内工場1000台のガスバーナーを置き換え
デンソーが人工光合成システムを開発中、回収した炭素はカーボンナノチューブに
工場などが排出する低濃度CO2に特化、デンソーが大気CO2回収システムを開発
製鉄のCO2排出を大幅削減、水素活用とCO2回収の実用化に着手
ヤマハ発動機が目指す「理論値生産」への道
合成燃料の活用に言及した日本、CO2排出100%削減にまた一歩進んだ欧州Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
モビリティの記事ランキング
コーナーリンク