合成燃料の活用に言及した日本、CO2排出100%削減にまた一歩進んだ欧州自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

土曜日ですね。皆さんおつかれさまでした。梅雨入りしましたね。空調に頼らずに快適に過ごせる季節が終わろうとしています。

» 2022年06月11日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 土曜日ですね。皆さんおつかれさまでした。梅雨入りしましたね。空調に頼らずに快適に過ごせる季節が終わろうとしています。

 7月から8月にかけての気温は平年並みか平年より高いとの予報ですが、10年に1度の猛暑を想定した場合、7月は東北、関東、中部エリアの電力需給が厳しいといわれています(※1)。電源や追加的な燃料調達を募集するとともに、再生可能エネルギーのフル活用、電力需給のモニタリングなど供給側の対策も講じられますが、需要側の節電の協力も求められています。今年の夏はどうなるのでしょうか……。

 さて、今週もさまざまなニュースがありました。6月7日に発表された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)(※2)では、グリーントランスフォーメーション(GX)に向けた取り組みに触れられています。自動車に関しては「将来の合成燃料の内燃機関への利用も見据え」と付け加えた上で、2035年までに新車販売に占める電動車100%とすること、電動車は電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)であることに言及しました。

 電動車100%の達成に向けては、蓄電池の大規模投資促進、車両の購入支援、充電/水素充填インフラの整備、中小サプライヤーの業態転換などに力を入れます。

 EVやPHEVを充電する電力の発電方法も議論に上りますが、再生可能エネルギーについてはS+3E(Safety、Economical efficiency、Environment、Energy security)を大前提に、国民の負担抑制と地域との共生を図りながら、「大胆な改革」を進めて最大限の導入に取り組むとしています。送配電網や電源への投資も着実に実施するとしており、分散型エネルギーシステムなど電気の地産地消も促進します。

 GXではさらに、水素、アンモニア、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、二酸化炭素の回収と貯留)、カーボンリサイクル、革新原子力、核融合などあらゆる選択肢を追求して、研究開発や人材育成、産業基盤の強化などを推進する方針です。カーボンニュートラルポート(発電や鉄鋼、化学工業などが立地する臨海部産業の脱炭素化)の形成や、船舶/航空/陸上の輸送分野での脱炭素化も進めます。

 6月10日には、企業間でのCO2の排出量取引を目指す「GXリーグ」(※3)の発足式も行われました。GXリーグは、企業の環境投資を正当に評価し、GXによって企業が成長する環境を実現し、消費者からもGXに取り組む企業が選ばれるようにすることを目指しています。自動車関連では自動車メーカーやサプライヤーが参加しており、参加企業は合計440社に上ります。

(※3)関連リンク:GXリーグ

 新聞各社は、首相の岸田文雄氏が来週末にもトヨタ自動車を訪問すると報じています。「あらゆる選択肢の追求」「将来の合成燃料の内燃機関への利用も見据える」と骨太の方針に盛り込んだことは、よい手土産になるかもしれません。

「不確実で変化の多い今、2035年の目標を決められますか」

 その一方で、欧州議会は、2035年までに新車の乗用車と小型商用車の排出ガスを2021年比で100%削減するというEU全体の目標を支持する案を6月8日に採択しました(※4)。賛成339票、反対249票、棄権24票でした。2035年までに2021年比100%削減するため、中間目標としては乗用車で排出を55%削減、小型商用車は50%削減を目指す内容となっています。採択された内容は、即座に義務化されるわけではなく、欧州議会がEU加盟国と交渉する際の立場を示すものです

 内容は2035年に乗用車と小型商用車を完全にゼロエミッションとするだけでなく、「ゼロエミッション車や低排出ガス車の購入インセンティブ(補助金)の撤廃」「CO2の排出基準を2025年、2027年、2034年に段階的に厳しくすること」「雇用や経済への悪影響を軽減するための資金援助の必要性をまとめた報告書を2023年末までに提出すること」「車両、燃料やエネルギーのライフサイクル全体のCO2排出量を評価するためのEU共通の方法を2023年までに提案すること」などの項目も含まれています。

 欧州自動車工業会(ACEA)は欧州議会での投票結果について、充電などインフラの大規模な増強がなければ達成が難しいこと、自動車産業の変革が、自動車産業の手に負えない多くの外部要因に依存していることなどを訴えました(※5)。印象的なのは、AECA会長でBMWのCEOであるOliver Zipse氏のコメントです。

 「私たちが日々世界で経験している変化や不確実性を考慮すると、10年を超える長期的な規制を今決めるのは時期尚早なのではないか。2030年以降の目標を定めるには、充電インフラの配備やバッテリーの原材料の調達がEVの継続的な急成長に対応できるかを評価するべきだ。また、CO2排出削減目標と代替燃料インフラ規制(Alternative Fuels Infrastructure Regulation、AFIR)を1つのパッケージとして検討してほしい」(Zipse氏)

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