需給動向を見ると、需要はコロナ禍で一時的な落ち込みを見せたものの、その後増加傾向に転じている。2021年は中国の見掛け消費量が伸びなかったが、中国以外の世界全体の消費量回復に伴い需要が大きく伸び、銅不足が拡大した。一方で、2021年から2022年にかけては大型の銅鉱山開発プロジェクトが見受けられること、中国の地金供給能力が拡大していること、銅価格自体が高止まりしていることなどを背景に供給が余剰傾向に向かう見通しだ。
ただ、相楽氏は「2023年以降は30万トンを超える規模の銅鉱山開発が少ない。新規鉱山が奥地化、高地化、深部化しているため開発費用が増加する見通しである上、産出国における鉱山業界への課税強化といった動きを背景に、銅鉱山開発への投資資金の勢いが鈍っている」として、供給量の見通しは不透明であると指摘した。
さらに、銅需要自体は電気自動車(EV)や新興国の都市化に伴うインフラ整備や脱炭素関連の用途で拡大すると予想されるため、銅需給バランスが崩れる可能性もある。国際価格の推移は、各国政策の動向にも左右されるため一概に言えないものの、「大きく下がりにくい環境にはなるだろう」(相楽氏)という。
なお、ウクライナ侵攻の影響に関して、相楽氏は「ロシアの地金供給量は世界全体の銅生産量における4%程度で、直接的な影響は限定的とみられる」と説明した。
ニッケル市場は、2020年ごろは中国の景気減速懸念やCOVID-19の影響で価格を下げるも、その後、銅と同様に回復傾向を見せていた。2021年にCOVID-19の変異株が流行すると軟化したが、カーボンニュートラルの流れを背景に電池向け需要が拡大するとの予測から、2022年1月には10年ぶりの高値水準に到達する。直近ではウクライナ侵攻による供給不安からさらに価格は上昇し、落ち着きを見せ始めつつあるが、侵攻前を上回る価格水準で高止まりしている。特に2022年の値動きについて、相楽氏は「異常な値動きだ」と表現した。
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