冷蔵庫も同様の流れで検査を行う。洗浄プロセスにおいては冷蔵庫内にあるケースなどのパーツを1つずつ取り出して、担当者や自動洗浄機が汚れを取り除く。庫内の温度設定などが正常に行えるかなどいくつかの検査項目をクリアしたら、修理部品を適宜補充した後、出荷準備に入る。使用済み冷蔵庫は、特にモーターや軸受け、パルスメーターの他、外装部分が破損している例が多いという。
リユース製品として出荷されるのは、新工場に送られてきた使用済み家電の8割程度である。それ以外の、検査過程でリユースするには不適格とされた使用済み家電は解体され、利用可能なパーツは修理用部品として工場が回収する。モーターや外装など、破損しやすい部品についてはストックを常備するが、それ以外の部品については必要に応じて都度メーカーに発注する。発売から年月のたった家電はメーカーからの部品供給に制約が生じるため、工場で扱える使用済み製品は、基本的に洗濯機は発売から約7年、冷蔵庫は約9年までのものとしている。
ヤマダホールディングスは現在、家電事業をコアとしつつ、その関連ビジネスを通じて相乗効果創出を狙う「暮らしまるごと」戦略を推進中だ。この中で、大型家電などのリユース/リサイクル事業、アウトレット・リユース販売事業などの強化を図っており、リユース製品の販売拡大を目指している。
ヤマダホールディングス 執行役員 経営企画室室長の清村浩一氏は「若い世代を中心にリユース製品への抵抗感は薄まりつつあり、製品自体へのニーズが高まっているのも間違いない。子育て世代や事業所、学生からの引き合いも強い」と語った。
一方で、ヤマダホールディングスではこうしたリユース製品のニーズ拡大に対して、生産能力が追い付いていない状況にあるという。リユース製品には資源の有効活用といった環境的観点に加えて、新品製品と比べると高い利益率を確保できるという経済的観点でもメリットがある。このため同社では今後、リユース製品の年間生産台数自体を現在の約7万台から2025年度までに約30万台へと増産するとともに、リユース製品を販売するアウトレット店舗のさらなる全国展開を図る。
今後の工場建設予定について、ヤマダ環境資源開発ホールディングス 代表取締役社長の桑野光正氏は「山口県、滋賀県、東北・北海道地方、沖縄県に1つずつリユース製品のための工場を持つ計画だ。滋賀県の既存工場は改築することで増産体制を構築する。東北・北海道地方に関しては、青森県か秋田県に工場を1カ所設けたい。自動倉庫を導入すれば、年間約10万台の生産能力が確保できるようになるだろう。これらが実現できれば、2025年までに年間約30万台の生産が可能になる」と説明した。
また、清村氏はヤマダホールディングスの強みとして「顧客からヤマダデンキなどの店頭で使用済み製品を買い取り、グループ企業を通じてリユースを行う、あるいはリサイクルによって再資源化を図る。そうしてできた製品をアウトレット店舗やヤマダデンキなどで顧客に届ける。リユース製品に関して、こうしたグループ内で完結するシステムを持つ企業はあまりない。使用済み製品の回収からアフターフォローまでの工程を、持続可能な事業として成立させて、社会貢献を果たす。こうした大規模事業として取り組む企業もまた、例がないものとなるだろう」と語った。
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