ペットボトルごみをアップサイクルしたPBT樹脂、バージン樹脂との置き換え可能:材料技術
SABIC(サウジ基礎産業公社)は、海辺などに捨てられたPETボトルを材料とし、化学的にアップサイクルしたPBT樹脂「LNP ELCRIN WF0061BiQ」を発表した。バージンPBT樹脂との置き換えが可能な代替材料として利用でき、循環型社会の実現に寄与する。
SABIC(Saudi Basic Industries Corporation/サウジ基礎産業公社)は2022年5月23日、海辺などに捨てられたPET(ペット/ポリエチレンテレフタレート)ボトルを材料とし、化学的にアップサイクルしたPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂「LNP ELCRIN WF0061BiQ」を発表した。
海岸から約50km以内に不法投棄されたプラスチック(オーシャンバウンドプラスチック)は、最終的に海洋へと流出し、環境汚染を引き起こす可能性が高いことで知られている。砂浜などに捨てられたPETボトルを材料に、同社のアップサイクル技術によって生み出されるLNP ELCRIN WF0061BiQは「LNP ELCRIN iQ」製品ポートフォリオに加わる新たな樹脂で、バージンPBT樹脂との置き換えが可能な代替材料として利用でき、循環型社会の実現に寄与するとしている。
SABICは海辺などに捨てられたPETボトルを材料とし、化学的にアップサイクルしたPBT樹脂「LNP ELCRIN WF0061BiQ」を発表[クリックで拡大] 出所:SABIC
LNP ELCRIN WF0061BiQは、同社独自のアップサイクル技術によって、オーシャンバウンドのPETをPBTに再重合することで、バージンPBT樹脂と同等レベルの性能をもたらす。ガラス繊維を配合しており高い難燃性を発揮し、0.8mm厚でUL94V-0規格に適合する他、優れた耐熱性、靭性、剛性に加え、薄肉成形に適した高流動性も備える。LNP ELCRIN WF0061BiQの主な用途としては、コンピュータのファンハウジングなど家電製品や自動車のシート、電子機器のコネクターや筐体などでの利用を見込む。
その他、同社では、産業廃棄物から回収されたプレコンシューマー材(製造工程で発生した廃棄物を再利用した材料)のリサイクルガラス短繊維を使用した樹脂およびコンパウンドなども手掛けており、循環型社会の実現に貢献している。
同社は、今後10年以内に100億本のPETボトルをより高性能で耐久性の高い素材にアップサイクルし、顧客に対して高付加価値を提供していくとともに、関係各社と協力して、オーシャンバウンドプラスチック廃棄物の削減、CO2排出量ネットゼロの達成など、喫緊の環境問題に対する新たなソリューション開発に取り組んでいくとしている。
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