東芝は、インフラ点検向けに、点検する現場の正常画像や類似した場所の画像を数枚用意するだけで異常箇所を高精度に検出するAI技術を開発。公開データセットを用いた評価において、従来技術の精度が89.9%だったのに対し、開発技術は91.7%となり「世界最高」(東芝)を達成したとする。今後は2023年度をめどに実用化を進めていく方針だ。
東芝は2022年5月23日、インフラ点検向けに、点検する現場の正常画像や類似した場所の画像を数枚用意するだけで異常箇所を高精度に検出するAI(人工知能)技術を開発したと発表した。公開データセットを用いた評価において、従来技術の精度が89.9%だったのに対し、開発技術は91.7%となり「世界最高」(東芝)を達成したとする。今後は2023年度をめどに実用化を進めていく方針だ。
国内では高速道路や橋梁といった社会インフラの平均年齢が35年を超えており、これらの更新や改修は点検に基づいて行う必要がある。ただし、インフラの多くはへき地や高所、斜面など立ち入りが難しい場所にあるため人手での点検作業にはコストと手間が掛かりすぎることが課題になっている。そこで、カメラで撮影した画像データにAIを適用して点検を自動化する技術の開発が進んでいる。
ただし、インフラ施設で発生する異常は、ひびやさびだけではなく、水漏れや油漏れ、落下物や異物の付着、部品の脱落などさまざまなものがある。一般的な機械学習ベースのAIでは、これら多種多様な異常の種類ごとに大量の学習データを用意し学習させる必要があるが、立ち入りが難しい場所にあるインフラ施設は、学習に必要な大量のデータ収集や正常時の画像と正確に位置合わせをした画像の撮影が困難である。
そこで注目が集まっているのが、正常画像や類似した画像を数枚用意するだけで点検したい画像における異常を検出できるAI技術「SPADE」である。SPADEでは、大量の画像データで事前に学習済みの深層モデルに基づく深層特徴量を、正常画像と点検画像について導出する。次に、点検画像に近い特徴を持つ正常画像を検索し、これらの深層特徴量を比較して差分を取ることで、異常(変状)部分を検出する異常スコアマップを計算する。これにより、点検画像の異常度をヒートマップなどで表示できるようになる。
ただしSPADEの場合、見え方が異なるだけの正常な箇所など、実際には異常がない箇所を検出する「過検出」が発生してしまい、これらを人が目視によって再度確認しなければならないという課題があった。
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