東芝が新たに開発したのは、SPADEの異常スコアマップにおいて、数枚の正常画像から同じような特徴部分を差し引くことで異常スコアマップを補正する技術である。これにより、異常箇所の過検出の抑制に成功した。公開データセットのShanghaiTech Campus datasetを用いた、画素単位の異常有無の推定精度であるPixel-AUROCによる評価では、SPADEの精度が89.9%だったのに対し、東芝の技術は91.7%という世界最高の精度を達成したとする。
この他、正常画像や異常画像の大量データ収集が難しい太陽光パネルの裏面の点検を模擬した実験では89枚の正常画像から異常(変状)箇所を検知できたという。道路の落下物の検出でも、点検画像の場所とは異なる道路の正常画像を3枚使うだけで、道路上の落石を検知できたという。
東芝はこれまでインフラ点検向けのAIとして、ひびなど特定の異常を検出するAIや、ひびなどの大きさを遠距離から計測するAI、ひびなどの撮影位置を推定するAIなどを開発している。これらと、今回開発した画像を数枚用意するだけで不特定の異常を検出するAIとロボット技術を組み合わせて、収集した画像データから異常箇所を地図に対応付け、異常箇所を漏れなくロボットで効率よく巡回できるシステムなどの開発につなげたい考えだ。
なお、今回開発したAI技術は、2022年5月25日開催のコンピュータビジョンの国際会議「ICIAP2021(21th International Conference on Image Analysis and Processing)」で発表される予定だ。
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