グローバルの顧客基盤を見ると、リコーはオフィス向けに複合機で400万台、PFUは業務現場や家庭向けにスキャナーで400万台を展開しており、互いの顧客層に大きな被りはなく、相互に広げていく余地は大きいとする。特に、PFUのスキャナーは、納品書や請求書などの原本を傷つけないスキャン性能、A8〜A3までのサイズ混載入力、手書き文字認識の高い精度の点で、リコーの複合機に搭載されているスキャナーと比べて優れた点が多いという。
さらに、リコーがワークフローのデジタル化に向けたプラットフォームとして展開する「RSI(RICOH Smart Integration)」とPFUのスキャナーを連携する際には、2022年4月27日に業務提携を発表したサイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」のリコーブランド版の活用も視野に入って来る。
リコーはPFUの買収を契機として、2025年度までに、ワークフローのデジタル化における500億円のビジネス創出、グローバルにおけるITサポート&サービス事業の2000億円規模までの拡大を目指す。
また、PFUのコンピュータプロダクト事業が手掛ける組み込みコンピュータは国内シェアトップの20%で、リコー子会社のリコーインダストリアルソリューションズも11%となっている。両社のシェアを単純に合算すると31%となり、国内市場で圧倒的トップになるとみられる。
PFUとリコーインダストリアルソリューションズは、国内メーカーの製造装置や医療機器、ロボットなどの制御を担う心臓部となる組み込みコンピュータ市場で競合する関係にあるが、「現在のところ、顧客ごとにうまくすみ分けができている」(リコー コーポレート上席執行役員 リコーデジタルプロダクツビジネスユニット プレジデントの中田克典氏)という。
中田氏はその上で「これまで海外ベンダーから組み込みコンピュータなどの産業用PCを購入していた国内製造業がより安定した製品供給を求めており、国内ベンダーへの期待が高まっている。リコーとPFUが一緒になることで、さらなる開発の効率化が可能になるだけでなく、より充実した製品の提供も行える。さらには、リコー独自でCMOSセンサーの開発を始めているが、これらを活用した新たなエッジコンピュータができれば、それを武器に海外展開などにもつなげられるのではないか」と述べている。
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