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» 2022年04月02日 08時00分 公開

「クルマを好きになって」「おかしいと思ったら声を上げて」、入社式のメッセージ自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

新年度がスタートしました。環境に大きな変化があった方も、変わりのない方も、1週間おつかれさまでした。4月1日には多くの企業で入社式が開かれたかと思います。新卒の新入社員のキラキラした様子をまぶしく感じた方も多いのではないでしょうか。

[齊藤由希,MONOist]

 新年度がスタートしました。環境に大きな変化があった方も、変わりのない方も、1週間おつかれさまでした。4月1日には多くの企業で入社式が開かれたかと思います。新卒の新入社員のキラキラした様子をまぶしく感じた方も多いのではないでしょうか。

 学校を卒業して、社会人という今までとは全く違う環境に飛び込む節目は、人生の中でも特別な出来事です。そんな特別な節目には、企業のトップも特別な言葉を贈ります。実感を伴ってそのメッセージの意味を理解できるのは新入社員の今ではなく、もう少し先だと思います。もしかしたら、社会人歴の長くなった人にこそ、染み入る言葉かもしれません。そこで、自動車に関わる企業の社長あいさつから気になる言葉を紹介したいと思います。

 まずはトヨタ自動車 社長の豊田章男氏です。豊田氏は、数多くの協力会社の存在があって自動車の国産化に成功したことに触れ、トヨタが多くの人が集まり、みんなで一緒にやっていく場所にしていきたいという思いを込めて、「人が集まる9カ条」について語りました。水素エンジンの開発の場となっているモータースポーツも、人が集まる場となり、一緒にやる仲間が増えています。

 豊田氏は、「人が集まる9カ条に1つ追加するとすれば『人は、喜々としてやっている人のところに集まる』ではないか」と語りました。どんなことも楽しんでやるためには、クルマを好きになることが第一歩だといいます。また、一定期間、がむしゃらに何事も楽しむつもりで仕事をして、仕事を通じて出会う人たちから何かを感じてほしいと述べました。そこに、クルマを、そしてトヨタを好きになり、仕事を楽しむきっかけがあるのだそうです。

 トヨタグループの一員であるジェイテクト 取締役社長の佐藤和弘氏は、自動車部品メーカーとして求められる安全と品質の重要性に触れた上で、安全と品質を守るための“止める勇気”について語りました。

 「少しでも異常を感じたらためらうことなく、すぐに使っている機械や業務を止めてください。この『異常に気づいて、止める』という行為で、皆さんが上司や先輩から叱られることはありません。そのときの迷いで損なわれる安全や品質の方が、後々会社にとってはるかに大きな損失となるのです。異常に気付いたら、勇気をもって止めてください」(佐藤氏)

 この「異常」は、製造業や工場に限らず、さまざまな場面や業種にあてはめることができそうです。異常に気付くには、正しい状態や、そもそもなぜそれが必要なのかについて知らなければなりません。新入りにはそれを勉強する姿勢が、経験者にはそれを教える姿勢が必要ですね。

 また、「異常に気付いて止めても叱られることはない」という新入社員へのメッセージを裏返せば、上司や先輩は異常を感じて止めた若手を叱ってはいけない、ということにもなります。新入社員だけが止める勇気を持っても意味はなく、会社全体で止める勇気を持つことが重要ですね。

「気付かない」「止まれない」の先にあるのは

 誰も異常に気付かなかったら。誰も止める勇気を出せなかったら。その結果が、品質不正問題であるのは間違いありません。ここ数年を振り返っても、自動車業界ではさまざまな品質不正問題が発覚しました。その中には、人事交流が少なかったり長年のやり方が疑いもなく引き継がれたりしたことで、誰も異常に気付かなかったケースがある一方で、異常だと気付いていて誰も止まれなかったケースもみられます。

 品質問題が続いた三菱電機の代表執行役社長 CEOである漆間啓氏は、入社式のあいさつを新入社員へのおわびから始めました。ニュースを見た家族から「入社して大丈夫なの?」と心配された人も少なくなかったからでしょう。

 新入社員に心掛けてほしいことの1つとして、漆間氏は「高い倫理観を持ち、いかなるときも誠実に」と伝えました。

 「私が考える『誠実さ』とは、何か違和感や疑問を抱いたときに、ためらわず、声を上げるということです。遠慮や忖度は無用です。社会通念や倫理観に照らし合わせておかしいと感じたときは、口を閉ざすのではなく、誰かに伝える、このことが会社を、そして自分自身を守ることにもつながります。いかなるときも、お客さまをはじめとしたステークホルダーの皆さま、ともに働く仲間たち、そして何よりも自分自身に『誠実』であることを心掛けてください」(漆間氏)

 違和感、疑問、そして異常を感じたときに声を上げるのは、心理的なハードルが高いですよね。新入社員や若手社員ほど、「自分が知らないだけで、それが普通なのかも」「ここで質問して止めたら嫌がられるかもしれない」「勉強不足で怒られるかもしれない」などと、ためらう理由がたくさんあります。その一方で、若者を受け入れる側が、流れを中断されて仕事が進まないことを気にしたり、「そんなことも知らないのか」と思ったりする心理もよく分かります。

 仕事を楽しむこと。クルマを好きになること。止める勇気を持つこと。淡々と働くうちに忘れてはいけないことが、新入社員に向けて伝えられていると思いました。

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