パナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部は、セルロースファイバー(CeF)を高濃度に含有した成形材料の開発において、CeFと混錬する樹脂を従来のポリプロピレンから植物由来のバイオポリエチレンに置き換え、標準品として展開する55%高濃度CeF成形材料「kinari」と同等の強度を備えるバイオマス度90%以上のCeF成形材料の開発に成功した。
パナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部は2022年3月18日、「バイオマス度90%以上のセルロースファイバー成形材料の開発」に関するオンライン説明会を開催し、その取り組み内容について紹介した。
これまで同社は、間伐材などから得られた木材繊維(パルプ)を微細化したバイオマス素材であるセルロースファイバー(CeF:Cellulose Fiber)に、樹脂(ポリプロピレン:PP)と添加剤を混ぜて、CeFを高濃度に含有する成形材料(CeF樹脂)を作り出す複合加工技術と、乳白色の成形材料の生成を可能にする混練技術を確立し、植物由来のCeFの使用比率を55%、70%と引き上げながら石油由来の樹脂の使用量を削減する取り組みを推進してきた。
また、2021年12月には、CeF含有量55%の成形材料について試作検証を終え、材料供給体制にめどが付いたことから、55%高濃度CeF成形材料「kinari」のサンプル販売を開始するなど、より多くの商材での活用に向けた展開にも着手し始めている。
今回の発表内容は「CeFの高濃度化」とともに、同社が開発の方向性として掲げる「植物由来樹脂への置き換え」を実現するもので、材料全体におけるバイオマス度(材料に含まれる植物/生物由来の原料の割合)向上を目指すものとなる。
具体的には、バイオマス度を高めるために、CeFに混ぜる樹脂を石油由来のPPから植物由来のバイオポリエチレン(バイオPE)に置き換え、標準品である55%高濃度CeF成形材料kinari(樹脂はPPを使用)と同等レベルの強度物性を備えた、バイオマス度90%以上のCeF成形材料(CeF含有量は同じ55%で、樹脂はバイオPEを使用)の開発に成功した。
植物由来樹脂の中からバイオPEを選んだ理由について、同社 マニュファクチャリングイノベーション本部 マニュファクチャリングソリューションセンター 材料・デバイス技術部 成膜技術課 シニアエンジニアの浜辺理史氏は「植物由来樹脂は非常に種類が少なく、融点の高いものだと成形時にパルプからできたCeFが焦げてしまうという課題がある。少ない候補の中から融点的にも特性的にも合うものとしてバイオPEを活用する方向で開発を進めることにした」と語る。
ここでのポイントは、軟らかい性質を持つバイオPEを使用しながら、樹脂にPPを使用している標準品のkinariと同等の強度を実現できた点にある。
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