オートノマスファクトリーのコンセプトでは、表面実装機などを中心としたハードウェア製品だけでなく、サイバー領域とフィジカル領域を知能化するソフトウェアも必要になる。
秋山氏がオートノマスファクトリー実現のキーポイントとして挙げたのが、生産ラインの変動要素である5M(huMan、Machine、Material、Method、Measurement)を自律的に制御しマネジメントするための「生産実行AI」と「計画立案AI」である。「自律的なコントロールを実現するには、5M実測値のバラつきを公差範囲内に収める必要がある。人が行ってきた作業を自動化し、判断をAIで知能化することで5Mのバラツキを極小化できる」(同氏)という。
これらの人による作業を自動化するAIを運用するためには、データ収集の仕組みが重要な役割を果たす。表面実装ラインにおけるデータ収集の起点になったのが、シーメンスとの協業によって展開してきた統合管理ソフト「iLNB」である。iLNBは、パナソニック製以外の表面実装関連設備の情報を収集可能であり110社との連携実績を有している。
この1台の産業用PCで表面実装ラインの制御データを一括して管理できる実績から生まれたのが、表面実装ラインの良品生産と安定稼働のために5Mのプロセスコントロールを実現する生産実行AIの「APC-5M」だ。APC-5Mによって、表面実装ラインの自動復旧機能や予知保全などが可能になる。2022年2月16日に販売を始める予定だ。
一方、計画立案AIを運用するためには、iLNBで得られる表面実装ラインの制御データだけでは不十分だ。部品や材料の管理情報やメンテナンス計画などを含めた、生産ラインの周辺データも併せて必要になる。そこで、iLNBのデータと周辺データを合わせて収集する「統合ナビ」を開発している。
この統合ナビと、統合MES(製造実行システム)パッケージ「CYPROS」、表面実装ライン向けMESソフトウェア「PanaCIM」、他社製の生産スケジューラーなどを組み合わせる形で、2022年度下期以降に計画立案AIを実現していく計画だ。さらに、オートノマスファクトリーのコンセプトにブルーヨンダーのソリューションがつながることで、オートノマスサプライチェーンの実現にもつなげていく構えである。
これらのオートノマスファクトリーを実現するソリューションの展開を2030年度に向けて進めることで、プロセスオートメーション事業の売上高4000億円の達成を目指す。4000億円の内訳は、表面実装機などの設備ハードウェアの比率が6割、今後注力するソフトウェアや交換部品を含めたサポートサービスなど非ハードウェアの比率が4割になるイメージだ。
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