「パナソニックに足りないのはスピード」CNS社CTOに就任した元MS榊原氏製造マネジメントニュース (1/2 ページ)

パナソニック コネクティッドソリューションズ社は2021年12月1日、同年11月1日に同社CTO兼イノベーションセンター所長および知財担当に就任した榊原彰氏に対するメディア懇談会を開催し、報道陣の取材に応じた。

» 2021年12月03日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社は2021年12月1日、同年11月1日に同社CTO兼イノベーションセンター所長および知財担当に就任した榊原彰氏に対するメディア懇談会を開催し、報道陣の取材に応じた。

IBMとMSでの知見を生かしパナソニックのビジネス転換を推進

photo パナソニック CNS社CTO兼イノベーションセンター所長の榊原彰氏

 榊原氏は日本アイ・ビー・エムで技術理事やグローバルビジネスサービス事業のCTOなどを務めた後、日本マイクロソフトで執行役員 CTOおよび、技術開発に特化したマイクロソフトディベロップメントの代表取締役などを歴任。これらの経験を踏まえた上で「パナソニックがITプロバイダーへと転換するというビジネス転換の中に一緒に参加したいと思った」(榊原氏)という動機からパナソニック CNS社CTOに就いた。

 プラットフォーマーやテックジャイアントともされる大手ITベンダーの中で、技術系の要職を務めてきた経歴を持つが、大学時代から情報技術系というわけではなく経済学を専攻していた。ただ「幼少期から家電を片っ端から分解していったり、父親の勤務先からのプログラミングの宿題を代わりに手伝ったり、技術的なものへの関心は強かった。その中で、社会人になってからの卓越した技術者やメンターたちとの出会いが大きかった」と榊原氏は振り返っている。

 また、榊原氏は「技術者であり続けるCTOであることが自身の強み」としており、技術管理だけでなく、自身でプログラムを作ること、アーキテクチャ設計を行うことも続ける考えだ。「自身で手を動かすからこそ、テクノロジーの本質をとらえた適切で迅速な意思決定ができる。そういうスタンスで業務を続けていく」(榊原氏)。

 こうした背景もあり、榊原氏は技術面での知見はもちろんだが、ビジネス面や組織面など多元的な視点を持つことが特徴だといえる。榊原氏はパナソニックに対して貢献できることについて「テックジャイアントのリカーリングシフトの渦中で得たノウハウを活用できることだ」と語る。

 「IBMもマイクロソフトもいくつもの経営危機やシフトを経て今の状況を作り上げた。例えば、IBMはメインフレームの売り切りやライセンス売りからサービスビジネスへの転換を行った。また、マイクロソフトはWindowsなどのライセンスビジネスからAzureを中心としたクラウドビジネスへの転換を遂げた。こうしたビジネスモデル転換の渦中で見てきたノウハウがある。パナソニックでも今まさにそうした転換を迎えている。技術面での背景はもちろんだが、こうしたビジネスモデル転換の知見も適用できると考えている」(榊原氏)

R&Dをマーケットドリブンに

 パナソニックCNS社では、現場プロセスイノベーションを掲げ、製造業を含むさまざまな現場をDX(デジタルトランスフォーション)を通じて変革していくことを目指している。また、その核として、サプライチェーン領域に特化したITプラットフォーマーであるBlue Yonder(ブルーヨンダー)を買収し、2021年9月に手続きが完了したところだ。

 榊原氏は「DXは総力戦で全員がデジタル人材にならないといけない。その大本はデータの取得となる。業務のあらゆる場面からデータを取得し、収集し、解析し、アクションにつなげていく。そのループを回し続けるところがポイントで、これを実現していくのが現場プロセスイノベーションのビジョンだ」と語る。

 そして、ブルーヨンダーとの統合については「パナソニックの持つエッジでの技術をブルーヨンダーのソリューションに組み込み、標準サービス化することでより価値の高いソリューションとしていく。例えば、顔認識技術などのセンシング技術などを組み合わせていく」(榊原氏)。また、ブルーヨンダーのAI研究チームとの共同研究を進め、エッジ関連技術を取り込んだAIの新たなアプリケーションなどを開発する。

 さらに、R&D部門の変革や文化醸成などにも取り組む。「イノベーションセンターでは個々の優れた技術があるものの、ボトムアップ型でそれぞれの部門がバラバラに技術を生み出す形となっている。出口戦略が後付けになってしまっている。R&Dをマーケットドリブンの色合いが濃いものに変えていきたい。業界の未来像を描き、そこに向かって現実的に必要な技術が何かを考えて開発するというサイクルに変えていく」と榊原氏は述べている。

 次ページでは、榊原氏に対する主な一問一答の内容を紹介する。

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