約20秒で医薬品前駆体を合成できる、高速フロー電気分解装置を開発医療機器ニュース

京都大学大学院工学研究科は、溶液を流しながら電気分解することで、数秒で電気分解が完了する新規フロー反応装置を開発した。また、同装置により、医薬品で使用する化合物を19秒で製造できることを実証した。

» 2022年01月27日 15時00分 公開
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 京都大学大学院工学研究科は2022年1月5日、溶液を流しながら電気分解することで、数秒で電気分解が完了する新規フロー反応装置を開発したと発表した。また、同装置により、医薬品で使用する化合物を19秒で製造できることを実証した。同研究科 准教授の永木愛一郎氏らの研究グループによる成果だ。

キャプション 新規電気分解装置を用いた医薬品前駆体の高速合成[クリックで拡大] 出所:京都大学大学院工学研究科

 開発したフロー反応装置は、溶液を流しながら電気分解できるように電極が内部の流路に設置されており、溶液が流路を流れる4秒間で電気分解が完了する。電気分解で発生した炭素カチオン種(炭素原子上に正の電荷を持つイオン)は別の場所に運ばれ、目的とする化合物生成の反応に使用される。

キャプション 開発した電解フロー装置 出所:京都大学大学院工学研究科

 研究グループは、この装置を用いて医薬品前駆体化合物の連続合成に取り組み、ADHDなどの治療薬「メチルフェニデート」の前駆体の合成をわずか19秒で完結させた。このフロー反応を継続することで、必要量の化合物を希望するタイミングで合成できることも実証した。

キャプション 高速な電気分解を利用した医薬品前駆体の高速合成[クリックで拡大] 出所:京都大学大学院工学研究科

 環境への配慮から、有害な廃棄物が生じる化学試薬ではなく、電気分解を利用して化合物を合成する手法が注目されている。しかし、従来のバッチ型電解装置を使用した方法では、電気分解に数時間以上の反応時間がかかり、電気分解で発生した炭素カチオン種などの反応中間体は、高い反応性を持ちながらも通電中に活性が失われ、合成に利用できないという問題があった。

キャプション 従来のバッチ型電解装置 出所:京都大学大学院工学研究科

 開発した装置は、原理上は今回実証した炭素カチオン種以外にも応用可能であるため、さまざまな有機電解合成への利用が期待できる。

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