最後に「代替品への対応」に関する、設計環境の在り方についても簡単に触れておきたいと思います。
樹脂だけでなく、半導体不足の先行きが見通せない今、自動車業界などでは特注の半導体を汎用(はんよう)品で代替して、急場をしのごうとする動きも見られはじめています。当然、ソフトウェアなどの設計変更を伴うわけですが、調達リスクや生産計画へのマイナス影響を回避するための苦渋の決断といえるでしょう。
半導体不足が長期化すれば、こうした選択は、自動車業界に限った話ではなくなるかもしれません。普段使用している半導体や電子部品を汎用の代替品に置き換えるといった大きな変更に、柔軟に対応するには、設計現場としてこれまで以上にエレ/メカ/ソフトのよりシームレスな連携が重要になっていくと考えられます。
特に、各領域にまたがって、それぞれの変更が互いに影響し合うような場合、複数の関係者が同一環境上でコラボレーションしながら、設計開発やシミュレーション、評価などをシームレスに進められる環境が欠かせないものとなるでしょう。その際、シミュレーションの果たす役割も非常に大きいといえます。また、言うまでもありませんが、樹脂部品を代替材料やリサイクル材に置き換えるといった場合においても、設計とシミュレーションのサイクルを効率的に回せる環境が求められます。
以上を踏まえると、設計現場としても、プラットフォーム(あるいはクラウドプラットフォーム)を活用した製品開発の重要性がより一層高まっていくことが予想されます。
また、「その他の対策」として、グローバル展開しているオンデマンド受託製造業者を活用するというのも有効な手段といえるかもしれません。オンデマンド受託製造サービスを展開するProto Labs(プロトラブズ)では、グローバル展開の強みを生かし、各国(米国、日本、英国、スウェーデン、ドイツ、フランス、イタリア)の拠点で抱える豊富な材料を融通し合うことにより、材料不足の影響を最小限に抑えた安定的な受託製造サービスを実現しているといいます。
いかがでしょうか? 使用する材料を置き換える/削減する、部品点数を減らすために工法を変えるなど、いずれも簡単ではないアプローチであり、ここで紹介し切れなかったさまざまな視点を考慮し、かつ実現可能性を加味したあらゆる課題をクリアした上で、ようやく成立する内容がほとんどだったかと思います。
そういう意味で、材料不足という課題に対して、短期的にできることは少ないのかもしれませんが、無策のまま次に来るかもしれない不測の事態に対峙するのではなく、本稿をヒントに、“作りたくても作れない”といった状況をどうやったら回避できるかを考え、材料不足への対策を講じるきっかけにしていただければ幸いです。
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