販売好調で各所からの評価も高い、あのクルマに何が起きたのか自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2021年12月11日 10時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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EVシフトに欧州の自動車部品産業はついていけるのか

 やはり今週も電動化に関するニュースが多かったですね。トヨタ自動車は北米で新設する車載用バッテリー工場をノースカロライナ州に設けると発表しました。2025年の稼働開始時には、4本の生産ラインで合計80万台分のリチウムイオン電池を生産し、将来的には生産ラインを少なくとも6本に増やし、年間120万台分の電池を供給します。また、カーボンニュートラル達成に向けて新工場では100%再生可能エネルギーを使用します。

 また、トヨタは欧州での電動化戦略も発表しています。「西欧で」という条件付きですが、2035年までに新車を全てゼロエミッション車にします。その少し手前となる2030年にはゼロエミッション車の比率を50%以上まで高めます。この目標に向けて新型EV「bZ4X」を欧州で初公開するとともに、ベルギーでは燃料電池車(FCV)などに使用する燃料電池モジュールの生産を始めると発表しました。さらに、水素エンジン車についても欧州向けにアピールし、EV一本やりではない姿勢を示しています。

 さらに欧州では、ステランティス傘下のアルファロメオが2027年からEV専門のブランドになると発表しています。欧州を中心に、新車をEVのみとするスケジュールを示した自動車メーカーが相次いでいますが、同じく欧州の自動車業界からは急速なEVシフトを警戒する声も出ています。

 欧州の自動車部品工業会であるCLEPAは、2035年までにEUとして、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含む「エンジンを搭載したクルマ」を全て廃止する場合、50万人の雇用が失われるという試算を発表しました。欧州に大規模なバッテリーのサプライチェーンが構築されれば22万6000人の新たな雇用が生まれますが、全体としては現状から43%減の純減になると見込んでいます。

 CLEPAのこうした危機感は、中堅・中小のサプライヤーではEVシフトに必要な投資が簡単ではないことから来ています。技術的なイノベーションにせよ、従業員の学び直しにせよ、おカネがかかります。

 日本は少子高齢化が世界に先駆けて進み、それに関する課題も早い段階から顕在化したことから「課題先進国」と呼ばれます。EVシフトに関しては、欧州が課題先進国となりそうです。うまい方向転換を図った成功例が増えていってほしいですね。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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