販売好調で各所からの評価も高い、あのクルマに何が起きたのか:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
やはり今週も電動化に関するニュースが多かったですね。トヨタ自動車は北米で新設する車載用バッテリー工場をノースカロライナ州に設けると発表しました。2025年の稼働開始時には、4本の生産ラインで合計80万台分のリチウムイオン電池を生産し、将来的には生産ラインを少なくとも6本に増やし、年間120万台分の電池を供給します。また、カーボンニュートラル達成に向けて新工場では100%再生可能エネルギーを使用します。
また、トヨタは欧州での電動化戦略も発表しています。「西欧で」という条件付きですが、2035年までに新車を全てゼロエミッション車にします。その少し手前となる2030年にはゼロエミッション車の比率を50%以上まで高めます。この目標に向けて新型EV「bZ4X」を欧州で初公開するとともに、ベルギーでは燃料電池車(FCV)などに使用する燃料電池モジュールの生産を始めると発表しました。さらに、水素エンジン車についても欧州向けにアピールし、EV一本やりではない姿勢を示しています。
さらに欧州では、ステランティス傘下のアルファロメオが2027年からEV専門のブランドになると発表しています。欧州を中心に、新車をEVのみとするスケジュールを示した自動車メーカーが相次いでいますが、同じく欧州の自動車業界からは急速なEVシフトを警戒する声も出ています。
欧州の自動車部品工業会であるCLEPAは、2035年までにEUとして、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含む「エンジンを搭載したクルマ」を全て廃止する場合、50万人の雇用が失われるという試算を発表しました。欧州に大規模なバッテリーのサプライチェーンが構築されれば22万6000人の新たな雇用が生まれますが、全体としては現状から43%減の純減になると見込んでいます。
CLEPAのこうした危機感は、中堅・中小のサプライヤーではEVシフトに必要な投資が簡単ではないことから来ています。技術的なイノベーションにせよ、従業員の学び直しにせよ、おカネがかかります。
日本は少子高齢化が世界に先駆けて進み、それに関する課題も早い段階から顕在化したことから「課題先進国」と呼ばれます。EVシフトに関しては、欧州が課題先進国となりそうです。うまい方向転換を図った成功例が増えていってほしいですね。
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→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら
- 日産が軽自動車の開発を始めなければ、三菱自の不正は隠されたままだった
三菱自動車の燃費測定試験での不正は、日産自動車が軽自動車の開発に着手し、「デイズ」「デイズルークス」の燃費を測り直したことによって明らかになった。芋づる式に、国内市場向けの大半の車種でも不正が行われていることが判明。三菱自動車の不正は、走行抵抗値の測定と国土交通省への届け出の際に2段階で行われていた。
- 日産の新型「ルークス」はADASが進化、ミリ波レーダー併用で2台先の検知も
日産自動車は2020年2月25日、スーパーハイトワゴンタイプの軽自動車「ルークス」の新モデルを発表した。三菱自動車との共同出資会社NMKVのマネジメントの下、日産自動車が企画、開発を担当した。今回のモデルチェンジから車名を「デイズ ルークス」からルークスに変更した。短い名称にすることでスーパーハイトワゴン市場での認知度の向上につなげる。発売日は2020年3月19日。税込み価格は141万5700円から。
- 日産と三菱自のNMKVが10周年、軽EVで引き続き連携
日産自動車と三菱自動車は2021年6月1日、共同出資会社のNMKVが設立10周年を迎えたと発表した。両ブランドによる販売台数は10年間で累計152万台を達成。現在、NMKVと日産、三菱は電気自動車(EV)のプロジェクトを推進中で、三菱自動車はこれに合わせて新型軽EVの生産に向けて水島製作所に80億円を投資する。
- 日産が三菱自の筆頭株主に、「燃費不正で急きょ決めたものではない」
燃費測定試験の不正で対応に追われる三菱自動車は、日産自動車から2370億円の出資を受ける。日産は2016年末までに三菱自の発行済み株式の34%を取得し、筆頭株主となる。一方で一連の不正に関する社内調査は思うように進んでおらず、国土交通省は「報告が不十分で遺憾。企業として存続したいなら、相応の姿勢を示せ」と尻をたたく。
- 三菱自動車はどのように走行抵抗値を測ったか、専門家も知らない独自手法?
三菱自動車が燃費不正問題に関する3度目の会見を開いた翌日、日産自動車は三菱自動車に2370億円を出資することを公表した。ただ、社内の指示系統や、ユーザーや販売店らを対象とした補償など燃費不正問題で明らかになっていない点は多い。不正の核心について「“高速惰行法”などという言葉は存在しない」との指摘も飛び出した。
- 「検査員の運転スキル」が頼りの完成検査、ヒト依存から脱却へ
国土交通省は2018年8月9日、スズキとマツダ、ヤマハ発動機の3社において、排ガスの抜き取り検査で、正しい条件で測定できなかったデータを有効なものとして扱う検査不備があったと発表した。
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