高速道路の自動運転にも必要な「800万画素の車載カメラ」から見た世界車載半導体(2/2 ページ)

» 2021年12月10日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 低照度でのノイズを低減するAR0820の高SNR(信号ノイズ比)性能は、車載向けでは初めて採用する「ハイブリッドスタック技術」によって実現した。ピクセル回路とロジック層をそれぞれ専用プロセスで作り込み、性能に最適なものにした。ハイブリッドスタック技術でロジック層を縦方向に積み重ねられることで、小型化も図っている。

 この他にも、明暗差の大きい場面で明るい場所の白飛びや暗い場所の黒つぶれを解消するHDR(ハイダイナミックレンジ)は、最大140dBまで対応した。常時140dBではデータ量が大きくなり、圧縮した場合に明るさのグラデーションが損なわれるため、140dBモードと120dBモードで切り替えられるようにした。直射日光や逆光など強い光が当たる場面でもより詳細な画像が得られる。

 車載カメラとしての性能以外も強化。カラーフィルターやマイクロレンズまで内製している強みを生かして紫外線の影響を軽減する技術を開発し、AR0820でも採用した。機能安全に関しては、画像からイメージセンサーの不具合を見つけられるようにするための“不具合画像ライブラリ”を提供する。カメラが出力した画像のみを基にして、故障やエラーが含まれているかをシステムで判断するのは困難だ。これまでは、物理的な故障や走行テストの中で不具合を洗い出す必要があったが、ライブラリを提供することで機能安全を考慮したシステム設計の負担を軽減する。さらに、セキュリティを満たす機構も盛り込んだ。

次世代製品もコスト競争力の高い2.1μmで

 次世代製品として開発している車載イメージセンサーも、ピクセルサイズ2.1μmで高いコストパフォーマンスを達成することを目指している。HDRや低照度での高SNR、高解像度といった性能を担保するのはもちろん、これまで画質に課題のあったLEDフリッカー(LEDが点滅して見えること)の低減機能も改善する。

 830万画素の次世代車載イメージセンサーは、新技術である「2.1μm Super Exposure シングルピクセル技術」により、110dB以上のHDRとLEDフリッカーフリーを両立。ピクセルサイズ3.0μmで500万画素の競合他社製マルチピクセルイメージセンサーとオンセミのアルファサンプルを比較すると、直射日光が差し込む場面で遠方にある信号機をよりはっきりと認識することができる。HDRは最大で155dBまでサポートしており、直射日光が差し込む状況でも400m先にある車両を認識できる。

 明暗差が大きい場面でも、高SNRによって対象を鮮明に捉えられる。これにより、夜間にヘッドランプが点灯した状態で路上に落ちている障害物を検知できる距離は競合他社のイメージセンサーよりも20m長くなるとしている。

次世代製品の性能を競合他社のイメージセンサーと比較した。明るい場所の白飛び、暗い場所の黒つぶれ、日陰との明暗差、LEDの信号機など、さまざまな部位で差をつけた[クリックで拡大] 出所:オンセミ
明暗差が大きい場面でもノイズを低減し、陰になった部分も高解像度だ[クリックで拡大] 出所:オンセミ

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