次に、デジタル工具連携の取り組みとして、Bluetooth機能を備えたデジタル工具とHoloLens 2を組み合わせるという試行事例を紹介した。
1つは、デジタル工具(トルクレンチ)とタイヤの形状を認識させて、MR空間上に必要なトルク値を表示し、実際に作業者がデジタル工具で締め付けた際のトルク値を通信で取得して、記録簿に自動的に転記するというものだ。ここでの形状認識には、PTCが提供する「Vuforia Studio」の「Model Target」が用いられているという。「形状認識に関してはさまざまな技術が製品化されており、それぞれ得手不得手があるため、さまざまなツールを活用しながら知見をためているところだ」(栢野氏)。
また、ローコードでビジネスアプリケーションの作成が可能なマイクロソフトの「Power Apps」を活用した、デジタル工具とHoloLens 2の連携に関する試行にも取り組んでいる。「BluetoothデバイスとPower Appsは仕様上、直接連携できないが、いったんPCにデジタル工具のデータ(トルク値)を読み取らせ、Azureサーバ経由でPower Appsにデータを取得させて、HoloLens 2上に表示するというものを試した。まだ課題も残るが、Power AppsでBluetoothデバイスを使えるようにするという試みは探してみても他に事例がない。ひょっとすると世界初ではないか」と栢野氏は説明する。
最後に、HoloLens 2の操作に慣れていない作業者を支援する、アバターによるヘルプガイダンスの実現に関する試行を紹介した。講演では、HoloLens 2を装着した作業者の前にアバター(あの青いイルカ?)が登場し、操作ガイダンスや次に何をすればよいかを音声合成と動きで指示してくれるデモを映像で示した。こちらも試行中の段階で改善点はあるものの、初心者には分かりにくいHoloLens 2の操作について、マニュアルを手にすることなく、1人でも学べるため、操作習得や作業効率の向上につながることが期待されるという。
栢野氏は「ここまでいろいろと紹介してきたが、xRコンテンツの作成には、xRならではの勘所がある」と述べ、特に、使いやすさ、分かりやすさ、疲れにくさといったUI(ユーザーインタフェース)設計が重要であるとし、経済産業省が支援し、トヨタ自動車も制作に協力している「AR等のコンテンツ制作技術活用ガイドライン 2020」(映像産業振興機構)の内容が大変参考になると紹介した。
また、xRコンテンツを含むデータ活用を推進するには、同社自身も長年取り組んできた“データ準備プロセス”が重要だとし、「ここでの整備が、企業のデジタルツインの実現にも欠かせない」(栢野氏)との考えを示した。
そして、最後に栢野氏は、xR活用に取り組もうとする聴講者に対して、同氏がいつも念頭においている「デジタル活用のヒントは現場にあり」「若い世代に任せてみる」「気軽にまずはやってみる、ダメならすぐやめる」という3つのメッセージを贈り、講演を締めくくった。
※本記事は主催者の許可を得て聴講した内容を基に制作したものです。
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