エヌビディアは「GTC Japan 2017」の会場で、同社が開発するVRシステム「NVIDIA Holodeck」の概要について明かした。同システムのアーリーアクセスを利用するトヨタ自動車による例も紹介した。
エヌビディアの日本法人は2017年12月13日、同社主催のユーザーカンファレンス「GTC Japan 2017」の会場で、米NVIDIAのDirector of Professional VR デビッド・ワインスタイン氏が、同社が開発するVRシステム「NVIDIA Holodeck」(Holodeck)の概要を明かした(関連記事:NVIDIAのCEOが日本のAI活用に期待、コマツとの協業で自律運転マシンが建設現場へ)。2017年10月から同社Webサイトよりα版のアーリーアクセス(評価利用)を受け付けている。今回は、製品設計・開発者向けとしているが、実際はエンターテインメントや建築設計でも活用できるとしている。
Holodeckの操作自体は、誰もが簡単に使いやすいよう配慮されたGUIになっているが、使用するユーザーは高性能なPCを用意する必要があり、かつ3Dデータ作成スキルもいる。「既に多数の申し込みがある。週単位で少数ずつユーザーを受け付けて対応している。そうすることでユーザーから有意義なフィードバックを得られるようにしている」(ワインスタイン氏)。この取り組みから得られたフィードバックを今後のロードマップに反映していきたいということだ。
Holodeckは、従来システムと比較して解像度が非常に高く、現実に近いリアルなレンダリングデータの活用が可能であるとしており、かつ細やかな機能を備える。VR空間ではユーザーはアバターとなって登場し、その空間内で自由に動き回りながら、他のユーザーと一緒に議論したり作業したりが可能だ。
従来のシステムではVR空間に没入してしまうと、周囲の仲間の表情やしぐさが分からなくなってしまうが、Holodeckではアバターの表情や手のしぐさによりユーザーの感情表現ができる。コントローラーで制御可能なアバターの手のジェスチャーに連動して、アバターの表情が変化する仕組みだ。
移動は普通に歩いて行うこともできるが、手元のコントローラーで出す移動マークを使ってVR空間をワープすることでリアルな場所の制限を気にせず移動できる。ユーザーがリアルな物体とぶつかりそうな場合は、青い格子が表示される。
VR空間には、3Dペンを使った線が描ける。一度描いた線は両手でつかむと、拡大したり縮小したりができる。円状のGUIを任意のデータに近づけることで断面が切れ、かつ円の範囲を拡大・縮小することで断面を切る範囲も自由にコントロールできる。
Holodeckの仮想空間はEpic Games「Unreal Engine 4」の拡張版に基づき構築される。「NVIDIA GameWorks」「VRWorks」「DesignWorks」を含んでいる。3Dデータはオートデスクの3D CGツール「Maya」「3ds Max」と連動する。
さらにHTCのヘッドマウントディスプレイ「Vive」が対応する「SteamVR」と連携し、音声指示に対応する。機能を利用したいユーザーが別途、SteamVRに登録する必要がある。
今回は、メニューアイコンから選択する形式の従来型のUIだが、ジェスチャーや言葉で操作する仕組みを実現したいという。さらに「AIや深層学習も組み込んで、バーチャルロボットシミュレーターである『Isaac』が作業を手伝う仕組みを提供したいと考えている」とワインスタイン氏は述べた。VR空間にいるIsaacに教え込んだ設定も、現実の空間にいる他のロボット実機に移植して、作業を手伝わせる仕組みも考えているという。
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