矢野経済研究所は、国内CAD/CAM/CAEシステム市場に関する調査結果の概要を発表した。2020年度はIT投資意欲の高さが市場を下支えし、コロナ禍によるマイナス影響は最小限となった。2021年度は輸出型産業を中心にIT投資が回復し、市場成長に転じる見通しだという。
矢野経済研究所は2021年10月12日、日本国内におけるCAD/CAM/CAEシステム市場に関する調査結果の概要を発表した。
2020年度の国内CAD/CAM/CAEシステム市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比1.2%減の3865億1300万円となった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で緊急事態宣言が発出されるなど、経済活動が抑制されたことによる企業の設備投資の減少が影響した。中でも、最大市場である機械系CAD/CAM/CAEシステム市場が落ち込んだが、EDAや土木/建築系CAD市場は堅調な成長を維持。経営環境の変化に対応しようとするユーザー企業のIT投資意欲の高さが市場を下支えしたことで、COVID-19の影響によるCAD/CAM/CAEシステム市場の落ち込みは最小限に抑えられた。
自動車分野におけるCASE(コネクテッド、自動運転化、シェアリング/サービス、電動化)に代表されるように、今後、ソフトウェア設計の比率が高まると見られている。現在のCAD/CAM/CAEシステムを取り巻くデータは、3Dモデル、図面、電子回路などハードウェア関連の情報が大半であるが、これらに加えてソフトウェアに関する情報が飛躍的に増えていくことから、今後「ALM(Application Lifecycle Management:アプリケーションライフサイクル管理)」の重要性が高まっていくと予想される。2021年時点でALMはほとんど普及していないが、将来的に大きく成長する領域だという。
2021年度の国内CAD/CAM/CAEシステム市場規模(同)については、前年度比4.6%増の4042億7300万円になると予測する。
コロナ禍の終息は見通せず先行きは不透明であるが、米国市場と中国市場が回復していることから、輸出型産業を中心に業績が回復しつつある。分野別に見ると、リモートワークに関連したPC分野やデータセンター分野、5G関連分野における根強い需要に加え、自動車関連分野も需要の立ち上がりを示しており、設備投資が回復しつつあるという。これらの動きに伴い、2021年度は国内CAD/CAM/CAEシステム市場の成長が見込まれる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.