ここまでは、主にモデリングに関するエラーについて紹介してきましたが、アセンブリ、図面におけるエラーにも触れておきます。
一般的な3D CADの場合、アセンブリや図面はモデリングした3Dモデルとリンク関係にあり、3Dモデルの形状が変更されるとアセンブリや図面も更新されます。そのため、3Dモデルにエラーが発生してしまうと、アセンブリと図面にもエラーが発生してしまいます。これが3D CADで設計を進めていく上で、とても厄介なところで、設計業務の時間ロスとなる部分です。
例5:構成部品の読み込みエラー
読み込むはずの部品のデータが保管されている読み込み先や、ファイル名が何らかの理由で変わってしまうと、読み込みエラーが生じることがあります。エラーを修正する方法としては、読み込み先、あるいはファイル名を再定義します。3D CADでアセンブリを行う場合には、きちんとしたデータ管理が必要で、場合によってはデータ管理ソフトを別オプションで購入するなどして、適切に運用することが求められます。
例6:参照関係が崩れている
部品と部品を組み合わせる際に、参照している面や線(エッジ)、点などの要素がなくなってしまうと、参照関係が崩れてしまいエラーが起きてしまいます。この場合、参照している要素を再定義する必要があります。
例7:寸法エラー
寸法を付ける際、参照していた要素が3Dモデルの設計変更によって、なくなってしまった場合にエラーが起きてしまいます。寸法が不要になった場合には削除、または別の箇所へ再定義します。
例8:部品の読み込みエラー
アセンブリと同様に、読み込むはずの部品のデータが保管されている読み込み先や、ファイル名が何らかの理由で変わってしまうと、図面で参照している部品が読み込めずにエラーが起きることがあります。エラーを修正するには、読み込み先、あるいはファイル名を再定義します。
設計業務において設計変更は付き物であり、その作業中に直面する、3D CADでのエラーもまた付き物です。要するに、うまく付き合っていくしかないのです。
筆者自身もかつて、設計変更に伴う3D CAD上でのエラーに直面し、夜中まで残業していた……という苦い思い出があります。ただ、経験を積んでいくことで、エラー原因を特定するスピードも上がっていきますし、同時にモデリングのスキルも向上していきますので、エラーそのものも減ってくるはずです。
苦労するケースとしては、自分ではなく、他人が作成したデータに対する設計変更です。その場合、作業履歴の解読から行う必要があるのですが、やみくもに手を付けてしまうと、どこのフィーチャの値を変更すれば、形状が変わるのかが分からず、ただ時間だけが過ぎていきます。このあたりは、作成ルールを社内で規定したり、3D CADのパラメータ機能をうまく活用したりすることで、解消できることもあります。
今回紹介したことを基本的な考え方として理解を深め、エラーが起きにくいモデリングにつなげていただければと思います。今後の連載の中で、設計変更でエラーが起きにくい形状の作成方法や、ノンヒストリーベース、ダイレクトモデリング機能などについても紹介していく予定です。お楽しみに! (次回へ続く)
テルえもん/本名:小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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