島津製作所は、電子部品に含まれる有害物質の分析に用いられるエネルギー分散型蛍光X線分析装置の新製品「EDX-7200」を発表。従来モデル「EDX-7000」と比べて分析速度が最大3倍、分析感度が最大1.7倍に向上するとともに、米国や欧州の有害物質法制で新たに規制されることになるP(リン)やSn(スズ)の検出に対応した。
島津製作所は2021年10月7日、オンラインで会見を開き、電子部品に含まれる有害物質の分析に用いられるエネルギー分散型蛍光X線分析装置の新製品「EDX-7200」について説明した。2013年9月発売の従来モデル「EDX-7000」と比べて分析速度が最大3倍、分析感度が最大1.7倍に向上するとともに、米国や欧州の有害物質法制で新たに規制されることになるP(リン)やSn(スズ)の検出を容易に行えるスクリーニング分析キットも用意した。価格(税別)は880万円で、年間販売目標台数は2021年が85台(国内35台、海外50台)、2022年が260台(国内110台、海外150台)、2023年が275台(国内115台、海外160台)を計画している。【訂正あり】
【訂正】島津製作所からの申し入れにより当初掲載していた図版を削除しました。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置は、試料にX線を照射して発生する蛍光X線のエネルギー(波長)や強度を解析することにより、試料を構成する元素の種類や含有量を調べる装置である。非破壊で、固体、粉体、液体などさまざまな試料形状に対して元素分析を行えるため、欧州の有害物質法制であるRoHS指令やELV指令に対応する電子機器メーカーや自動車メーカー、部品サプライヤーが、原材料の受け入れ、完成品出荷時の検査などの品質管理、各種部品の品質保証などを行う際に用いられている。また、高感度を生かした材料組成や不純物分析、研究開発にも利用されている。
島津製作所は1998年にEDXシリーズを市場投入してから全世界で事業を展開しており、累計出荷台数は8000台を超えている。国内のエネルギー分散型蛍光X線分析装置市場は2006年7月のRoHS指令施行時にピークを迎えたが、2013年ごろから再び増加しつつある。この2013年に液体窒素不要の新モデルとしてEDX-7000を投入してからは、島津製作所が国内シェアトップを堅持している。エネルギー分散型蛍光X線分析装置の世界市場も2020年にコロナ禍でいったん落ち込んだものの2021年以降は再び回復する見込みだ。
有害物質法制は、ELV指令でPb(鉛)、RoHS指令でBr(臭素)が大きくクローズアップアされたが、その後も規制対象元素が拡大する方向にある。2022年以降には、RoHS指令でClとSb、米国の有害物質法制であるTSCAでPが規制対象に加わる見込みだ。また、蛍光X線分析装置を用いた規制元素分析手法の国際標準であるIEC 62321-3-1でも、2022年以降に、Cl、Sb、Sn、Pが加わる予定で、広範な有害物質規制を求めるREACH規則でもSnとPの対応が求められるようになる。
ただし、エネルギー分散型蛍光X線分析装置でこれらの元素分析を行うには、より高感度が必要になる。例えば、リン酸エステル化合物のPIP(3:1)に含まれるPの重量比は約8%と含有量が少ない。また、Clピークによるバックグラウンド上昇でPのピークが埋もれてしまうという問題があった。
そこ新製品のEDX-7200は、PやSnの分析に対応するため、高速係数回路の採用と新たな1次フィルターの搭載により分析感度を従来比で最大1.7倍に向上した。また、分析速度についても従来比で最大3倍を実現できる。2006年ごろのRoHS指令対応需要に向けて展開したモデル「EDX-720」と比べると分析速度は最大30倍に達するという。
有害物質法制では、Pが60ppm、Snが100ppm、Clが70ppm、Sbが200ppmが検出下限要求になっているが、EDX-7200はそれらを大幅に上回る検出感度を有している。これら規制元素の分析に必要な管理試料とソフトウェアを1パッケージにしたスクリーニング分析キットでも、対象元素として新たにPとSnが加わった。
実際に、TSCAで規制対象になっているPIP(3:1)を高感度に分析できるとしている。この他にも、酸化チタンコーティング耐久性確認などでも高感度を役立てられるという。
多様な用途に合わせたオプション機能は、「真空測定ユニット」「ヘリウム置換測定ユニット」「微小部分析キット」など従来モデルのEDX-7000から引き継ぎつつ性能を向上させている。真空測定ユニットとヘリウム置換測定ユニットは、試料から発生した蛍光X線が大気によって吸収される影響を抑えて感度を向上するためのものだ。「微小部分析キット」を使えば、標準でX線照射径が10mm、5mm、3mm、1mmのところに、5mmを0.3mmに替えることで微小異物の高精度な分析や微小領域の不良解析を行える。また、連続測定を行う際には「ターレットユニット」を利用できる。
さらに、島津製作所のFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)やGC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)と連携した検査や分析を行うためのソフトウェアも用意している。
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