米国の大手半導体製造装置メーカーであるアプライド マテリアルズ(Applied Materials)のブログの抄訳を紹介する本連載。今回は、半導体ファブの省エネや脱炭素の実現に向けた取り組みを紹介する。
本記事は「Applied Materials Blog」の抄訳です。
世界経済が回復に向かう中で、その原動力は半導体にあることが認識され始めている。ところが、その半導体が不足している。
各国政府にとって、各種半導体チップの不足解消が急務となっている。半導体業界では、近年例を見ない規模の生産拡大が業界全体で検討されている。世界各地の新規ファブ建設に向けた投資額は、公表されたものだけですでに数千億米ドルに上る。
次世代ファブに求められるのは、単なるプロセスノードの微細化だけではない。ファブ設計をサステナビリティの視点から考える動きが、大手半導体メーカーの間でこれまでになく強まっているのだ。
アプライド マテリアルズは、こうしたサステナビリティ意識に基づく設備拡張への支援を心待ちにしている。半導体はスマートシティーや電気自動車など、環境に優しいアプリケーションの実用化を支えている。半導体製造ファブはかなりのエネルギーを消費し、数十年にわたってウエハーを加工し続ける設備なので、テクノロジーを活用してファブでの製造プロセスのスマート化を進め、エネルギー、水、化学薬品の消費量とCO2排出量を減らすことは理にかなっている。
このブログではサブファブ(製造フロアの床下)について取り上げる。各種の生産支援装置が置かれるこの部分は、注目を浴びることこそ少ないが、近代的なファブのエネルギー消費量のほぼ半分はここで費やされており、その効率化を追求することは重要だ。ここにはパイプやポンプ、ダクト、熱交換器、除害装置などがひしめきあい、上階のクリーンルームに設置されているハイテク装置と半導体製造プロセスを支えている。
「SEMICON West 2020」の基調講演の中で、アプライド マテリアルズ CEOのゲイリー・ディッカーソン(Gary Dickerson)は業界コンサルタントのサラ・ボイド(Sarah Boyd)博士を招いて、半導体業界におけるサステナビリティの課題と機会について見解を求めた。ボイド博士によれば、現在全世界では1000を超えるファブが操業しており、毎年、5000億米ドル相当分以上の半導体チップを生産し、同じく約5000万トンに上るCO2を排出している。月間ウエハー投入数5万枚規模の先進的なファブの場合、消費電力は1年間でおよそ1TWhに達するが、これは人口10万人の都市(例えばアプライド マテリアルズの本社がある米国カリフォルニア州サンタクララなど)が消費する量に近い。ファブの消費電力の半分はウエハープロセス装置によるものだが、残り半分はサポート設備とクリーンルームが消費している(図1)。
つまり、ファブの消費電力と関連排出物のうち相当の部分がサブファブ内の機器類によるものなのだ。業界が生産能力を拡大するに当たっては、こうしたサポートシステムに照準を合わせた斬新なソリューションを採用することが、ファブ全体のカーボンフットプリント削減への切り札となるだろう。そこで紹介したいのが「iSystem」である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.