テクノロジーを活用して製造フロア上の装置とサブファブ内の機器をインテリジェントに連携させれば、それに応じてエネルギー節減量は増える(図2)。iSystemはソフトウェアフレームワークとコントローラー網から成り、プロセス装置とサブファブ機器の両方からデータを収集して、運用やエネルギー利用に関するインテリジェントな判断を提供することができる。
これまでは、製造装置が定期メンテナンスなどで休止している間もサブファブ機器はフル稼働を続けていたが、iSystemの導入により装置とサポートシステムの連携が大幅に改善され、担当エンジニアが電力消費をきめ細かく調節できるようになる。半導体製造は繊細なプロセスなので、真空ポンプや排ガス除害装置などの使用状況をインテリジェントに調整するためには実データが必要で、それにより生産中断や安全へのリスクを回避する。iSystemは各装置の作動状況やニーズをモニターし、安全で最もエネルギー効率の高い設定値を入力することができる。
台湾のTSMCは、アプライド マテリアルズや他のサプライヤー各社と協力して台中市のファブ15BにiSystemを導入し、先ごろその事例研究を発表した。それによると、このソリューションは年間で1340万kWhの電力を節減し、CO2などの排出量を1万3800トン削減している。TSMCは2021年、ファブ18にもiSystemの採用を進めており、いずれ台湾にある同社300mmファブの全てにこれを導入する予定だ。
TSMCはカーボンニュートラルとネットゼロエミッション(排出実質ゼロ)を目標に掲げている。こうした取り組みを通じ、将来的には年間8200万kWhの電力削減が見込まれ、CO2などの排出削減量は8万4600トンとなり、これにより5億2000万台湾ドル(1860万米ドル)のエネルギー節減効果を生む見通しだ。こうした目標や節減は、半導体業界全体のカーボン状況改善に向けた重要なステップとなる。
現在iSystemは業界全体で3000台以上の装置に接続されているが、ファブの効率改善はいろいろな意味でまだ始まったばかりだ。アプライド マテリアルズは全世界の半導体メーカーと協力し、各社のサステナビリティ目標について理解を深めるとともに、その達成を後押ししている。こうしたコラボレーションを進めることで、ビッグデータとAI(人工知能)の力を半導体製造のあらゆるステージに生かすことが可能となる。
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