米国の大手半導体製造装置メーカーであるアプライド マテリアルズ(Applied Materials)のブログの抄訳を紹介する本連載。今回のテーマは電気自動車への搭載が進むSiCデバイスだ。
本記事は「Applied Materials Blog」の抄訳です。
1908年にヘンリー・フォードが世界初の量産車モデルTを投入したが、それ以来の大きな輸送革命がいま起こりつつある。よりクリーンでサステナブルな未来に向け、ガソリンエンジンなどの内燃機関(ICE)を徐々になくして電気自動車(EV)への切り替えを促す制度が各国で導入されているからだ。
そのため自動車産業全体が変わりつつあり、世界の大手自動車メーカーは相次いでEV化を進める意向を表明している。GM(General Motors)は2035年までに全車種をEVにすると発表しており、日産自動車は2030年代前半に新モデルを全て電動化する計画だ。ボルボ(Volovo Cars)は販売する車両を2030年までにEVのみに切り替える。BMWとフォルクスワーゲン(Volkswagen)は、同年までに欧州でのEV販売比率をそれぞれ50%と70%に引き上げるという。
この大きな変化の中核を担うのがパワー半導体だ。半導体業界ではシリコン(Si)からシリコンカーバイド(SiC)へのシフトが始まっており、これに伴ってパワー半導体も大きく変貌しつつある。
EVを動かす電気モーターは、6つのシリコン絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)とダイオードをパルス幅変調(PWM)方式で駆動することによって動力を得るのが一般的だが、IGBTよりもスイッチ速度が速く、リカバリー特性にも優れたSiCを代替デバイスとして用いれば、省エネやバッテリー長寿命化、熱管理システムの小型軽量化によりEV航続距離の延長が可能となるなど、さまざまな利点が見込まれる。
私(アプライド マテリアルズ Llew Vaughan-Edmunds)は2021年春に行われた“Rethinking Semiconductors”という興味深いパネルディスカッションで、こうした状況について詳論した。この催しはCanaccord Genuityがバーチャル開催したGlobal Sustainability Conferenceの一環として行われたもので、パネリストには私の他CanaccordのアナリストJed Dorsheimer氏、チップ業界のベテランであるCree CEOのGregg Lowe氏とRogers Corporation CTOのBob Daigle氏、そして私の同僚でアプライド マテリアルズのストラテジック マーケティング ディレクター Rob Davenportが参加した。
その中で繰り返し触れられ、多くの共感を集めたテーマが、パワー半導体の台頭と、これが今後数十年にわたってもたらす技術的・経済的促進の重要性についてだった。調査会社Yole Développementの予測によれば、パワーデバイス市場は180億米ドル規模から2025年には230億米ドルと4%の年平均成長率が見込まれている。これに対し、SiCおよび窒化ガリウム(GaN)の化合物半導体はおよそ9億7700万米ドルから40億米ドルへとパワーデバイス市場の10倍の成長率で伸びる見通しだ。
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