これらの調査結果から、今回の火災事故はFAB棟4階クリーンルームにあるウエハー製造エリアにあるチタン除去装置(SF6-3)が発災装置であると推定し、「SF6-3」にて何らかの電気的不具合に起因する発熱および発火が生じ、周辺部品や部材などから出火したことにより火災が発生したと取りまとめている。
また、今回の火災事故が鎮火までに92時間を要した延焼が発生した背景としては発火に対する早期検知が困難であったこと、延焼拡大が早かったことが考えられる。具体的には以下の点を指摘している。
これらに基づき、旭化成グループ全体ではクリーンルームを対象とした火災発生防止対策、火災の被害最小化対策に取り組み、再発防止策をまとめている。
火災発生防止対策としては、クリーンルーム内の電気機器における管理項目および頻度を強化する。例えば、電気保安点検における自主点検の強化として、端子部の増し締めなどの点検箇所の強化を実施し、点検項目の最適化を図る。また、装置構造や仕様などの制約により、対象端子の目視確認や増し締めが困難な装置の箇所も存在する。その場合は、被害最小化対策を強化するなどの他対策と合わせて火災拡大防止を図る。
また、電気機器の装置導入時における火災発生防止策として、装置の筐体および電源制御部において、火災発生を抑制するために不燃または難燃の性能を有する部材選定を検討する。製造プロセスおよび装置構造や仕様などの制約により、不燃性部材や難燃性部材の適用が困難な場合は、被害最小化対策を強化するなどの他対策と合わせて火災拡大防止を図る。また既存装置については、装置調査から対象装置を選定し、装置導入時と同様の火災発生防止策を検討する。
火災発生時に被害を最小化する取り組みとしては、まず早期検知システムの強化を図る。クリーンルームで火災が発生した場合、消防法に定められた火災報知器や、それらの設置位置および設置数では、出火検知が遅れる可能性があるため、クリーンルームに合った対策を進める。具体的には、火災感知器の設置位置および設置数の最適化を図る。また、より感度の高い1種光電式煙感知器や、気流影響を受けにくい吸引型散乱光検知方式の超高感度煙感知器の設置を検討する。さらに、クリーンルームにおける区画構造や運転体制を考慮して、人では通常気付きにくいエリアの異常を早期検知するために、カメラやサーモセンサーなどの検知システムを導入し、パネル室など遠隔拠点から監視する体制を検討する。
延焼防止策としては、クリーンルームにおける空気などの支燃物循環および熱風循環の抑制を行う。火災発生時の給排気運転、循環運転、排煙設備稼働に関して、FM基準(米国拠点の損害保険会社であるFM Globalが中心となって策定した火災防止に関する承認規格)などを参考に、クリーンルームを保有している工場ごとの状況に応じた基準を策定し、延焼拡大防止を図る。さらに、付帯設備の不燃性部材や難燃剤部材の採用拡大を図る。その他、自衛消防隊による初期消火訓練の強化などにも取り組む。
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