MONOist 新たにDMSを推進することなどを含め、体制の整備も進んでいます。
西村氏 新たにEMS事業部内に「DMS推進部」を設置した。ここでDMSに関する案件の交通整理を行っている。DMS強化がポイントといっても、相談が来る案件の中にはOKIの強みが発揮できる場合もあればそうではないものもある。また、ビジネス面で対応が難しい場合もある。こうした見極めを行うとともに、社内のリソースとの調整を行う役割を担う。
さらにEMS事業部内だけでなくOKIとしても、これらに応える体制変更も進んでいる。EMS事業部はコンポーネント&プラットフォーム事業本部内にあるが、同様に機器開発を行うATMや鉄道の発券機などを展開する自動機事業部、2021年4月に吸収した旧OKIデータの情報機器事業部などと、共通機能を横ぐしで利用できる組織体制へと変更があった。設計開発などを担う「開発本部」、共通の生産技術を扱う「生産統括本部」、ビジネス管理などを行う「ビジネスサポート本部」、他社とのコラボレーションを推進する「ビジネスコラボレーション本部」などである。
これにより重要度が高いプロジェクトではより多くのリソースが活用できるようになった。開発本部で考えると700人以上の人員が配置されており従来以上に幅広い技術を活用できる土壌ができた。DMSを強化していく上で、技術の幅や量などを含めて自由度が高まり、そこが大きなポイントだと考えている。
また、EMS事業部内でも、子会社4社を2社に統合し、意思決定の迅速化やシナジー強化を図る他、アクチュエーターを扱うOKIマイクロ技研を傘下に加え、キーコンポーネントを押さえた設計・製造が行えるような体制を整えている。
MONOist DMSを強化する中で、重視する分野はありますか。
西村氏 基本的には従来のEMS同様、高品質で故障が許されないような難しい領域で使用される装置や機器の開発や生産を受託するという方向性は変わりない。民生品のような大量生産を行う領域を積極的に拡大するつもりはない。
EMS事業はもともとOKIで生産を行っていた情報通信分野からスタートしたが、FA機器や電力インフラ機器などの産業分野、半導体テスターなどの計測分野などが拡大。最近では、高度治療機器や内視鏡制御装置などの医療分野や衛星向けの電子基板など航空宇宙分野などを伸ばしており、これらの5分野が得意領域である。これらのEMSでも対象としてきた領域を、DMSまで受注できるように提案を進めているところだ。
医療機器や航空宇宙分野などの新たな領域拡大に注力してきたが、ここ最近は旺盛な半導体需要などもベースに半導体製造関連機器の電子制御関連の受注が大きく増えている。半導体関連は需要の波が大きいので従来は慎重に見てきたが、現状の引き合いが非常に強いためにしばらくは強化していく。
MONOist DMSまでカバーすることで、新たな領域への拡大も進んでいますか。
西村氏 医療機器分野ではベンチャー企業などからDMSも含めた相談が大きく増えてきている。ただ案件の中には、アイデアベースで実現性が乏しいものもあるため、これらの精査に気を配っているところだ。
また、電力インフラ関係でも新たにデジタル化などの動きに合わせて、機器開発で協業などを行うような動きも出てきている。産業DXなどの動きが広がる中で、産業特化型のメーカーでは、対応できない領域も多くなってきている。一方で、OKIとしても産業特有のニーズや仕様などは分からない。そういう面では、組み合わせの魅力というものがあると考えている。積極的にパートナーシップを拡大し、その中でDMSの受注を増やしていく。電力系など以外の領域でもパートナーシップを積極的に広げていく方針だ。
MONOist DMSを拡大するために提案方法の変化はありますか。
西村氏 従来のEMSでは設計として出来上がったものの生産委託を受ける形なので、提案用のブローシャも生産技術を訴えるものを1種類用意していただけだった。ただ、DMSで設計開発までを請け負うとなると、業界ごとの実績などが重要になる。そのため産業ごとのブローシャを用意し、各産業により深く訴求できるようにした。それぞれで必要な規格や資格なども変わってくるため、これらをアピールできるようにしていく。
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