OKI電線では2021年4月に新社長である山口英雄氏が就任。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が続く中で、どのように新たなかじ取りを進めていくのだろうか。新社長に取り組みの方向性と抱負について聞いた。
産業用ロボットや製造装置向けで強みを持つ電線・ケーブル事業、用途が拡大しているフレキシブル基板事業、ワイヤ放電加工機向けの電極線事業などを展開するOKI電線では2021年4月に新社長である山口英雄氏が就任。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が続く中で、どのように新たなかじ取りを進めていくのだろうか。新社長に取り組みの方向性と抱負について聞いた。
MONOist コロナ禍を含めた現在の状況をどう捉えていますか。
山口氏 コロナ禍により苦労しながら事業活動を進めているのが現状だ。OKI電線では、電線・ケーブル、フレキシブル基板、ワイヤ放電加工機向けの電極線などの事業を展開しているが、さまざまな活動で大きな制限を受けている。Web会議などを活用して試行錯誤を行いながら進めている感じだ。特に営業面での新規開拓などは難しい面があったと感じている。
一方で、2020年秋ごろからは中国を中心に、FA、工作機械、半導体製造装置向け電線・ケーブルの需要が急回復している。2021年1〜3月では過去のピーク時並みの受注状況となっている。製造部門では、感染対策などを行いながら現在も繁忙が続いており、負荷の高い状況が継続している。これらへの対応も進めていく必要がある。
FA、工作機械、半導体向け電線・ケーブルは、2021年も勢いが続くと見ている。これらの工場向けの機器は省人化や自動化の動きが加速しており、中長期的に見ても右肩上がりで成長すると見込んでいる。この需要増の機会を逃さないようにしたい。コロナ禍を含めてさまざまな変化が絶えず生まれており、それに伴う制限の一方で新たな機会も生まれている。その中でできることを着実にやっていくことが大事だと考えている。
MONOist 営業活動に苦しんだとのことですが、その中ではどういう取り組みを進めているのでしょうか。
山口氏 電線・ケーブルの営業活動はカタログ販売のような形が多かったが、製品開発の上流から入り込み、顧客の製品開発の困りごとを解決し、新たなニーズを発掘するような取り組みが重要になってきている。その観点で2020年度には、営業部門に新たにセールスエンジニアの専任者を配置した。事業部長経験者などを配置し、顧客の深い要望を掘り下げると共に、技術的な解決策を一緒に提案するような取り組みを進め、成果を生み出しつつある。
コロナ禍で展示会などのリアルの場が制限され、新規顧客や新規領域の開拓には苦労する面も多いが、セールスエンジニアによるニーズ掘り下げにより、開拓につなげる。今後はこの活動をさらに広げていく。また、セールスエンジニアが担う役割をこなせる技術担当者を増やし「寄り添い活動」として展開する。
MONOist コロナ禍の需要の急増や急減に加え、半導体の逼迫(ひっぱく)や原材料の高騰など、生産活動に影響を与える事象も増えています。
山口氏 社内の柔軟性が問われる状況が増えている。製造面では急な立ち上げや急な落ち込みへの対応が難しいが、現在も需要の急増などに一部で対応できていないところがある。生産設備はあっても稼働させる人員の手配ができないなど変動への対応は大きな悩みだ。
半導体などの調達については、現状で直接的な影響はないが、一部で納入顧客の製品が半導体不足のために開発や出荷が遅れるような場面も生まれ、間接的には影響が出始めている。また、部材発注を早める動きなどが出ていることから、実需をギリギリまで見極めて、部品発注を行えない状況となり、実需との乖離(かいり)が大きくなれば、部品在庫が増えるリスクなども生まれている。
また、現段階で半導体以上のリスクとなっているが、銅価格の高騰だ。電線・ケーブルには銅は必須の素材であり、1トン当たり1万ドルを超えるような現在の状況は、非常に厳しい。当面はコスト削減などで対応するつもりだが、現在のような価格状況が続けば、製品価格の改定なども検討する。
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