最後に、自然環境や野生動物の保護活動も触れたいと思います。工場は環境を汚染し、自然動物の住処を奪う……そうしたイメージを持たれている方も多いかもしれません。しかしながら、環境への意識の高まりや地域住民との関係性を考えると、自然を大切にし、社会と共生しなければ、工場は運営できません。
例えば、Tesla(テスラ)のドイツの生産拠点(ギガファクトリー)は建設が難航しており、当初の計画に対し大幅に遅れています。建設予定地が飲料水源保護地の一部に重なることや、工場に必要なインフラや従業員の住宅を建設するために数千ヘクタールもの森林が伐採されている点、隣接した自然保護区に生息するヘビの希少な在来種の冬眠が妨げられるリスクなどが指摘されています。工場の建設が無許可であるという報道も出ています。このように環境保護団体などから強い反発を受けていることが、ドイツのギガファクトリー建設の遅れの要因となっています。
いかに自然環境を守りながら工場を運営していくのか。日本では工場の敷地で積極的な保全活動に取り組んでいる企業もあります。日本を代表する部品メーカー「デンソー」では、浄化処理された排水を使ったビオトープ(生物が自然な状態で生息する空間)を工場の敷地内に整備し、絶滅危惧種の淡水魚「ウシモツゴ」が生息できる環境作りを行っています。20年以上にわたって活動を続けることによって、現在では500匹以上のウシモツゴ、2000匹以上の黒メダカ、数種類の水生昆虫などが生息する環境を作りあげました。こうした取り組みはデンソーのみならず、日本各地の工場で行われています。地域住民と良い関係を作るだけでなく、企業イメージの向上にもつながっています。
実務担当者には実益が少なく感じられ、周囲の人からの理解も得られず、ないがしろにされがちな「環境」への取り組み。しかし、環境への意識は年々高まり、企業の中の重要度は増し、継続的な成長のためには不可欠な要素になっています。
規模の大きい会社であれば「環境報告書」を発行しているので、どのような取り組みを行い、実績がどうだったのか確認することができます。まずは環境について自分の会社はどんな取り組みをしているのか、見に行くことから始めてみませんか。環境を意識することで、普段の仕事の視点が少し変わるかもしれません。
ティア1サプライヤーで働く、入社10年を超えた中堅社員。普段は作業服に身を包み、工場と事務所、仕入れ先やお客さんとの間で、汗をかきながら現地現物をモットーに働く。Webでは「ええやん、日本自動車業界」のコンセプトのもと、現場目線で役立つ自動車関連ニュースを幅広くキュレーション。
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