製造業がポストコロナで勝ち残るために最低限必要となる3つの視点ものづくり白書2021を読み解く(2)(3/5 ページ)

» 2021年08月23日 11時00分 公開
[長島清香MONOist]

グリーン(カーボンニュートラルへの対応)への取り組みとは

 2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みとして、2015年に開催された「第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」にて採択されたパリ協定が本格実施の段階に入る中、2021年4月時点で124か国と1地域が2050年CO2や温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年までに目指すことを表明している(図11)。日本でも2020年10月の第203回臨時国会における菅内閣総理大臣所信表明演説において、2050年までに温室効果ガス排出量を全体としてゼロとする2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことが宣言された。

photo 図11:2050年カーボンニュートラルに賛同した国・地域(クリックで拡大)出典:2021年版ものづくり白書

 このような動きに並行して、製造業を含めたグローバルに活動する大企業の中にも、自社のサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現に向けた対応や、再生可能エネルギーの調達などの取り組みを積極的に行う企業が現れ始めている。今後は大企業のみならず中小企業も含めて、日本のサプライヤーにおいても、このような動きに留意していく必要があると述べられている。

 さらに、国内外のさまざまな投資家や金融機関において、気候変動対応への取り組み状況を資金供給の判断材料の1つとする「グリーンファイナンス」の手法が普及していること、企業や地方自治体などが環境問題の改善効果をもたらす事業の実施に要する資金を調達するために発行する債券「グリーンボンド」の発行額が増加していることから、製造事業者は積極的な行動変容により、カーボンニュートラルを効果的な資金調達を行うチャンスの1つとして捉えるべきだとしている。

 データを見ても全世界のグリーンボンドの発行額は、2019年時点で2675億ドルまで急速に拡大しており(図12)、日本でもグリーンファイナンス推進機構がグリーンファイナンスを推進している他、みずほフィナンシャルグループは、グリーン/サステナブルファイナンスの規模を2019年度から2030年度の累計で25兆円とする目標(内グリーンファイナンスは12兆円)を掲げている。

photo 図12:全世界のグリーンボンド発行額の推移(クリックで拡大)出典:2021年版ものづくり白書

 日本国内におけるグリーンボンド発行額は、2017年には発行総額が2223億円、発行件数が11件だったが、2020年には発行総額が1兆円を超え、発行件数も77件に上り、発行総額、件数ともに急増している(図13)。

photo 図13:我が国のグリーンボンド発行額、件数の推移(クリックで拡大)出典:2021年版ものづくり白書

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