日産自動車が2021年度(2022年3月期)第1四半期(4〜6月期)の連結業績を発表。売上高は前年同期比71%増の2兆82億円、営業利益は同2296億円改善の757億円、経常利益は同3226億円改善の903億円、当期純利益は同4001億円改善の1145億円とコロナ禍の影響を大きく受けた前年同期から大幅な回復を遂げた。
日産自動車は2021年7月28日、オンラインで会見を開き、2021年度(2022年3月期)第1四半期(4〜6月期)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比71%増の2兆82億円、営業利益は同2296億円改善の757億円、経常利益は同3226億円改善の903億円、税金等調整前当期純利益は同4751億円改善の1705億円、当期純利益は同4001億円改善の1145億円。コロナ禍の影響を大きく受けた前年同期から大幅な回復を遂げ、事業構造改革計画「NISSAN NEXT」の2021年度目標に掲げる営業利益率2%の達成に向け好発進となった。
2021年度第1四半期のグローバルの自動車市場動向は、前年度同期比66%増と大きく回復しており、日産自動車の販売台数も同63%増の104万8000台となった。伸びをけん引したのはコロナ禍から先行して回復した中国と、ワクチン接種の広がりで経済回復が進む北米と欧州だ。中国は前年同期比71%増、北米は同70%増、欧州は同69%増を達成。一方で日本市場は同7%増にとどまっている。
利益面の改善に貢献したのが、NISSAN NEXTで進めてきた車両販売におけるインセンティブの抑制と単価の向上だ。北米市場の主力SUVである「ローグ」はシェア向上に加えて、販売価格が前年同期比で22%増、1台当たり売上高も同28%増となっている。中国市場の主力セダン「シルフィ」についても、シェア向上とともに、競合他社が値下げする中で販売価格の維持を実現できている。「ノート」や新型車の「ノート オーラ」、電気自動車(EV)の「アリア」、欧州市場の主力SUV「キャシュカイ」、インフィニティブランドの新型SUV「QX55」なども同様だ。これによって、営業利益損益分岐点台数も、2018年度の約500万台から2021年度以降は約440万台に最適化できるという。
2021年度第1四半期の業績が好調な滑り出しとなったことを受けて、2021年度通期連結業績見通しも、2021年5月の2020年度決算発表時から上方修正を行った。販売台数は440万台で据え置くものの、売上高は前回予想比6500億円増の9兆7500億円、営業利益は同1500億円増の1500億円、当期純利益は同1200億円増の600億円を見込む。営業利益率は1.5%となり、NISSAN NEXTの2021年度目標に掲げる中国合弁会社比例連結ベースの営業利益率で2%以上に相当する。日産自動車 社長兼CEOの内田誠氏は「NISSAN NEXTの2021年度目標を必ず達成し、最終ゴールである2023年度の営業利益率5%も達成する」と意気込む。
なお、今回の業績見通しの上方修正では、半導体の供給不足などに起因する原材料価格のリスクを追加で350億円織り込んだ。2021年5月に発表した当初の通期連結業績見通しでは、半導体供給不足により2021年度上期で自動車生産に50万台のマイナス影響が出るものの、下期に25万台分を挽回する方針だった。足元の市況では、半導体不足がさらに加速しているという見方があるものの「半導体供給不足については当初と同じ見立てで対応できる」(内田氏)とした。
また、内田氏は、CEOに就任してから1年8カ月が経過した現時点での日産自動車の状況についてコメントした。
「日産は確実に輝きを取り戻しつつあり、社内や顧客からの声にも変化を感じている。今後は、明確なビジョンを社内外に示し、社会に貢献するため、日産を持続成長ができる企業に確実に変えていく必要がある。そのために、10年後からその先を見据えた長期ビジョンとロードマップを策定中であり、詳細は2021年秋に発表する」(同氏)
なお、中核となる電動化戦略については、EVとシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」による「各市場での電動化の推進」、ルノーや三菱自動車とのアライアンスを活用した部品共通化などによる「競争力の強化」、EVで地域課題を解決する「ブルースイッチ」やバッテリーのリユースなどによる「電動化による従来の枠を超えた取り組み」という3つの視点で取り組みを進めている。
内田氏は「これまでの日産はどちらかと言うと自分自身との戦いが中心になっていた。これからが本当の意味で、日産という企業の真価が問われることになるだろう。日産がなくてはならないと言ってもらえるように、全社一丸となっていきたい」と述べている。
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