コスト低減で収益改善も車載半導体不足でブレーキ、日産ホンダの決算製造マネジメントニュース

日産自動車は2021年2月9日、オンライン会見を開き、2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月期)の決算を発表した。売上高は前年同期比29.2%減の5兆3174億円、営業損益は1316億円の損失、当期純損益は3677億円の損失だった。

» 2021年02月10日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日産自動車は2021年2月9日、オンライン会見を開き、2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月期)の決算を発表した。売上高は前年同期比29.2%減の5兆3174億円、営業損益は1316億円の損失、当期純損益は3677億円の損失だった。四半期ごとの3カ月間の営業利益は2020年4〜6月期、7〜9月期で赤字だったが、10〜12月期では271億円の黒字に転換し、前年同期を上回った。事業構造改革計画で取り組む販売費用や固定費の削減が進展し、収益改善に貢献した。

 2020年度通期の業績予想は、車載半導体の供給不足に伴う新車販売の減少から売上高の見通しを下方修正し、2400億円減の7兆7000億円とする。2020年11月の時点では通期の売上高の予想を1400億円増に上方修正していた。新車販売の減少は営業損益にもマイナスだが、コスト削減の取り組みが進むことから営業損益は1350億円改善して2050億円の赤字を見込む。当期純損益も850億円改善して5300億円の損失となる見通しだ。

2020年度の販売見通し(左)と営業利益の増減要因の見込み(右)(クリックして拡大) 出典:日産自動車

 通期の販売台数は前回の予想から各地域で減少する。中国は前回予想比0.2%減の145.7万台、日本は同7.4%減の49.1万台、北米は同5.2%減の118万台、欧州は同9.4%減の36.7万台を計画している。車載半導体の供給不足についてはサプライヤーとともに改善に取り組んでおり、「半導体の生産能力は増強してから生産が増えるまで半年はかかる。供給不足が顕在化したタイミングを考えると、2020年5〜6月には状況が改善するのではないか」(日産自動車 代表執行役COOのアシュワニ・グプタ氏)とみている。

 日産は2020年5月に発表した事業構造改革計画「Nissan NEXT」で、2020年度末までに2018年度比で固定費3000億円の削減を目指す。2020年4〜12月期では前年同期から固定費を12%減らした。生産で9%、研究開発やデザインなどで8%、マーケティングや販売で27%、一般管理費で9%の削減を達成している。

事業構造改革計画の進捗(左)と2020年の各四半期の業績(右)(クリックして拡大) 出典:日産自動車

ホンダも四輪車の販売台数を下方修正、半導体供給不足で

 ホンダも同日にオンライン会見を開き、2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月期)の決算を発表した。売上高は前年同期比16.8%減の9兆5467億円、営業利益は同30.1%減の4470億円、当期純利益は同8.5%減の4441億円で減収減益だった。グループ販売台数は二輪事業が同29.6%減の1059.1万台、四輪事業は同10.1%減の342.5万台だった。

 10〜12月期の3カ月間では前年同期から増収増益を達成している。特に営業利益は、研究開発費の低減やコストダウンにより前年同期比66.7%増のプラスだった。研究開発費の低減は業務の効率化や前年で開発費が増えた反動によるもので、将来に向けた研究開発は継続している。

 2020年度通期の業績見通しのうち、営業利益と当期純利益を上方修正した。販売管理費や一般管理費の削減、研究開発費の効率化、その他コストダウンにより、営業利益は前回予想から1000億円増の5200億円を見込む。販売台数については、二輪事業ではアジアでの増加を織り込んで20万台増の1500万台を計画するが、四輪事業は車載半導体の供給不足などで10万台減の450万台とした。

2020年4〜12月期の業績(左)。2020年度の営業利益の見通しと増減要因(右)(クリックして拡大) 出典:ホンダ

 車載半導体の供給不足による販売台数の減少幅は自動車メーカーごとに濃淡があるが、ホンダは日米の人気車種で影響が出ることから四輪車で10万台減と大きな減少を見込む。

 ホンダ 代表取締役副社長の倉石誠司氏は「車載半導体の影響がなければ、コスト抑制で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を吸収して前年を超える営業利益を確保することもできそうだった。東日本大震災やメキシコの洪水などの災害の経験を受けて、安定調達のために複数のサプライヤーから仕入れ、在庫量などでリスク分散も図ってきたが、カバーしきれなかった。在庫の見直しが必要だと認識している」と述べた。

 供給不足の車載半導体が生産に与える影響について、スバルは2021年1〜3月の生産台数が4万8000台のマイナスと見込む。マツダは生産台数の減少は確定ではないとしつつも、2月に国内外で7000台の影響が出ることを想定して対応する。

2020年4〜12月期の業績と通期見通し
2020年4〜12月期 通期見通し
売上高 営業利益 当期純利益 売上高 営業利益 当期純利益
ホンダ 95,467 4,470 4,441 129,500 5,200 4,650
△16.8 △30.1 △8.5 △13.3 △17.9 2.0
日産 53,174 -1,316 -3,677 77,000 -2,050 -5,300
△29.2 - - △22.1 - -
スズキ 21,755 1,387 1,132 30,000 1,600 1,100
△17.2 △18.6 △2.8 △14.0 △25.6 △18.0
スバル 20,748 982 742 28,500 1,000 750
△16.5 △35.6 △33.6 △14.8 △52.5 △50.8
マツダ 19,594 -319 -782 29,000 0 -500
△23.3 - - △15.5 - -
三菱自 9,527 -866 -2,439 14,600 -1,000 -3,300
△42.8 - - △35.7 - -
上段は金額で単位は億円。下段は前年同期比の増減で単位は%。トヨタ自動車は2021年2月10日に発表予定

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