Matlantisのβテストに参加した信州大学 先鋭材料研究所 教授の古山通久氏も会見に登壇した。古山氏は、排ガスフィルターや燃料電池電極などに用いられている合金ナノ粒子触媒について、スーパーコンピュータを用いたナノ粒子の理論計算で世界をリードしていることで知られている。
信州大学では、5種類以上の元素を混合したハイエントロピー合金の開発に向けた物質・材料探索を行っている。用いる金属元素は60以上あり、これらを複数組み合わせた上で、それらの組成や合成条件、反応条件も考慮すると膨大な探索が必要になる。古山氏は「多元素化が進む中で、効率的探索が必須になっていた」と語る。
Matlantisのβテストではまず、高価なRh(ロジウム)触媒の代替が可能な、Pd(パラジウム)Ru(ルテニウム)M(白金などの金属原子)合金の安定性予測を第一原理計算に匹敵する精度で予測できていることを確認した。そして、燃料電池電極における白金ナノ粒子と酸化物担体の2753原子の界面構造計算を、従来よりも大幅に高速化できることも確認した。「2000~3000CPUを用いた量子力学計算で数カ月かかったものが、Matlantisではわずか0.125秒で終了し、非常に驚いた」(古山氏)。
古山氏は既に、Matlantisの正式版のユーザーになっており「次々と新しい材料を生み出すサイクルを回していきたい。われわれの周辺でも高い期待が集まっている」(同氏)としている。
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