日本の充電インフラのカギを握るe-Mobility Power、2030年代に向けた展望は?和田憲一郎の電動化新時代!(43)(2/3 ページ)

» 2021年07月01日 06時00分 公開

和田氏 充電といっても、普通充電器もあり、急速充電器もある。また、充電器の設置、工事対応、ネットワーク構築、充電プラットフォーマー、メンテナンス、運営対応などさまざまな側面がある。eMPの事業として、どこまでをカバーしていくのか。

四ツ柳氏 図表3に示す通り、NCSから承継した事業である個人(乗用車)向けパブリック充電に加えて、商用・業務用のパブリック充電、そして、商用・業務用、個人向けのプライベート充電をeMPの事業領域としている。

 パブリックの急速充電サービスを主軸にし、充電器の設置、保守から、充電ネットワークの運営、充電サービスまでを提供していく。また、ショッピングセンターなどの事業者が充電器を設置する際の機器選定や調達、設置、保守、メンテナンスのワンストップサービスも提供している。充電器を設置した事業者は、eMPの提携パートナーとして充電ネットワークに接続していただき、共に充電インフラの利便性を向上させていく関係になる。

和田氏 ショッピングセンターなどの事業者が急速充電器を設置する場合はどのような流れになるのか。

四ツ柳氏 充電ネットワークを拡充していく上で要衝となる立地に店舗をお持ちの企業には、弊社から営業にお伺いしている。ショッピングセンターなどが顧客サービスの一環で自主的に充電器を設置する場合は、充電器メーカーに連絡が入ったり、弊社にお問い合わせを頂いたり、流れはさまざまだ。自主的な設置の場合は、充電器の仕様もシステムも施主が決定する。その際、eMPのネットワークに提携していただくとEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)の充電サービス会員が店舗に集まる仕組みになっている。

図表3:サービス領域図(クリックして拡大) 出典:e-Mobility Power

日本政府の成長戦略への対応

和田氏 日本政府は成長戦略として、2030年までに普通充電器12万基、急速充電器3万基を設置すると発表している。その戦略に対し、eMPはどのような役割を果たすのか。また費用面はどこまでカバーされるのか。

四ツ柳氏 直接お聞きしていないので推測も入るが、急速充電器3万基というのはパブリック充電器を指していると認識している。その中でも高速道路など交通の要衝に設置する充電器は、NCSとJCNから事業承継している弊社が、関係するステークホルダーとともに引き続き責任を持って拡充していく。

 費用面は、国や自治体の補助金が出る場所もあるので、積極的に活用させていただく。補助金のカバー範囲はイニシャルコスト、つまり急速充電器本体と工事費用とされることが一般的だ。ただし、支給条件や上限が設定されるので、工事費用が場所の都合で高くなるケースなどもあり、常に全額カバーされるというわけではない。また、維持費用(ランニングコスト)はわれわれでまかなう。

和田氏 日本政府は2035年にはガソリンエンジン車廃止を打ち出している。今後、2035年までに充電インフラはどの程度必要になるとみているのか。

四ツ柳氏 必要基数は、2025年、2030年、2035年にEVとPHEVの普及台数がどの程度かによる。足元の5年については、インフラ先行で、提携パートナー企業とともに現在の7000基(≒7000口)余りから倍増の1万4000口程度には拡充していきたいと考えている。2035年にガソリン車の廃止との政府方針に鑑みると、急激な普及拡大に備えて充電インフラについても現在の計画からの拡張性を持たせながら進めていきたい。

図表4:e-Mobility Powerの投資の考え方(クリックして拡大) 出典:e-Mobility Power

ユーザーからの不満点は

和田氏 急速充電器について、ユーザーからの不満点はどのようなことがあるのか。

四ツ柳氏 圧倒的に多いのは、「充電渋滞」である。高速道路のSAやPAでは休日など人の移動が多いタイミングで充電渋滞が発生し、ユーザーから不満の声をいただいている。このため高速道路各社と調整しながら、1拠点に複数口タイプの充電器を置くことを検討している。また充電口数の増加のみならず、充電器から次の充電器までの設置区間が長い「空白エリア」にも充電器を新設し「充電渋滞解消」と「走行距離の不安感払拭(ふっしょく)」を実現したい。

 もう1つは、経年劣化の問題だ。2014年ごろに政府の大型補助金で設置した充電器は、経年劣化が顕著だ。屋外に設置されている充電器が多いため、操作画面の液晶パネルが劣化して表示が見にくくなるケースがある。また、ケーブルが重く扱いにくいというお客さまの声もある。

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