リコーが「ハードからデータビジネスへ」、独自AIで事業転換を狙う製造業がサービス業となる日

リコーは2021年6月17日、独自の自然言語処理AIなどを活用して業務支援を図る新サービス「仕事のAI」シリーズをリリースして、データビジネス事業を本格始動すると発表した。同シリーズの第1弾として、問い合わせ窓口に寄せられたVOCを分析する「RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業」を同年7月15日から発売する。

» 2021年06月21日 09時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 リコーは2021年6月17日、独自の自然言語処理AI(人工知能)などを活用して業務支援を図る新サービス「仕事のAI」シリーズをリリースして、データビジネス事業を本格始動すると発表した。同シリーズの第1弾として、問い合わせ窓口に寄せられたVOC(顧客の意見:Voice Of Customer)を分析する「RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業」を同年7月15日から発売する。

AI研究開発を進めるリコー

 リコーは「仕事のAI」を通じて、業務や顧客とのコミュニケーションを記録したドキュメント資産をアナログ/デジタルを問わず分析することで、顧客の業務支援や新たな価値創造の提供を目指す。

「仕事のAI」の概要図※出典:リコ−[クリックして拡大]

 今回発売する「RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業」はコールセンターやヘルプデスクに寄せられたVOCを、リコーのクラウドデータ基盤「RICOH Smart Integration(RSI)」に送信して自然言語処理AIで分析するものである。

 AIはVOCに含まれた顧客の意図を理解し、内容や重要度別に分類する。例えば、食品業を対象とした今回のサービスでは、より深刻な健康被害の発生を示唆する表現が含まれたVOCを重要度が高いと判断してマークする。これによって重要な意見の見逃しを防止するとともに、潜在的な市場問題解決につなげるとともに、商品企画やマーケティングに生かしやすくする。

「仕事のAI」が対象とする領域※出典:リコ−[クリックして拡大]

 月額利用料金が3000件までの分析で20万円、超過1件につき5円ずつ課金される仕組みだ。

 これまでにもリコーは与信の自動化や、工作機械の振動見える化、契約書など定型文書のOCR(光学文字認識:Optical Character Recognition)を実現するAI技術を開発してきた。2017年には製品への搭載や、社内の業務改革を目指したAI適用の取り組みを推進するAI応用研究センターを設置した他、同社のデジタル技術研究センターに約200人のデータサイエンティストやAI開発者を抱えるなど、AI関連の事業開発体制を強化している。

リコーはこれまでにもAI技術の研究開発に取り組んできた※出典:リコ−[クリックして拡大]

 リコージャパン 代表取締役 社長執行役員の坂主智弘氏は「主な顧客層は大企業や中堅企業で、2025年までに100億円の売り上げ達成を目指す。最初に展開するのは食品業だが、製造業や小売業へと展開する予定だ。また、今後は自然言語処理AIを用いて、営業支援や文書作成支援、営業日報の分析サービスなども展開していくつもりだ」と語った。

 また現在、リコーはリモートワークの拡大によるプリント需要の減衰を背景に、オフィスプリンティング事業における複合機などハードウェアの売上高が減少している。こうした中でデータビジネス事業の展開を進めることについて、リコー 代表取締役 社長執行役員 CEOの山下良則氏は「デジタルビジネス事業でハードウェアの需要減少をカバーするというだけでなく、オフィスサービスや現場のデジタル化に関する事業をベースに『仕事のAI』などを展開していくことで、ハードウェア中心だった既存のビジネスモデルを転換できると考えている」と語った。

リコーの山下良則氏(左)、リコージャパンの坂主智弘氏(右)※出典:リコ−[クリックして拡大]

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