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» 2021年06月15日 06時00分 公開

リチウムイオンが充放電に関与すれば、どんな材料でも「リチウムイオン電池」!?今こそ知りたい電池のあれこれ(3)(2/2 ページ)

[川邉裕(日本カーリット),ITmedia]
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リチウムイオン電池とモバイル機器は二人三脚

 リチウムイオン電池の普及を語る上で避けて通れないのが、携帯電話機やノートPCといったモバイル機器の存在です。リチウムイオン電池とモバイル機器、その進歩と普及はほぼ同時に進んだといっても過言ではありません。その背景には、先述した安全性の向上や小型軽量化といったリチウムイオン電池の技術はもちろん、モバイル機器に使用される電子回路技術の発展も密接に関わっています。

NTTが発売した車外兼用型自動車電話(クリックして拡大) 出典:KDDI

 今やすっかり私たちの生活に定着し、小さく軽いものも増えた携帯電話機やノートPCといったモバイル機器ですが、当初は肩掛け式携帯電話機「ショルダーフォン」などのように現在よりもはるかに大型の製品ばかりでした。

 当時はまだこのような機器はアナログ方式であったため、駆動電圧5.5VのIC回路が使用されており、起電力1.2Vのニッケル水素電池は5個直列、起電力4.2Vのリチウムイオン電池では2個直列で電源設計がされていました。

 その後、方式がアナログからデジタルに変わるとともにIC回路の駆動電圧は5.5Vから3Vに低電圧化されました。そのため、ニッケル水素電池の場合は3個直列の必要があるのに対し、リチウムイオン電池の場合は1個で電源を設計することが可能となりました。

 電池1個で電源設計できるというのはモバイル機器にとって極めて大きなメリットであり、さまざまな機器の小型・軽量化が実現、本格的普及の一因となったともいわれています。リチウムイオン電池が、モバイル機器の設計やIT社会へと移り行く時代のニーズにマッチしたことが、私たちの生活に大きく貢献した要素であるともいえるでしょう。

 このように、リチウムイオン電池の普及はモバイル機器の進化と密接に結び付いていたため、高容量化や高エネルギー密度化、つまり限られた空間の中にどれだけ多くのエネルギーを詰め込めるか、そして電池をより小さく、モバイル機器をより長時間駆動させるという観点で開発が進められてきました。

 電池性能の向上に伴い、優れた特性をモバイル機器以外にも用いたいというニーズの広がりを見せています。1回の充電で走行できる距離を伸ばしたい電気自動車(EV)のように、依然として高エネルギーを望む声もありますが、電動工具やひげそりのように駆動時間よりも瞬間的なパワーを優先したい用途、非常用電源で求められる高い耐久性、ドローンで重視される軽量性、屋外でも外気温に左右されない安定動作など、用途によってニーズはさまざまです。特性の違いを生かすことで、私たちの生活へ貢献する領域を広げつつあります。

-20℃でも操作できるタブレット端末も登場した(クリックして拡大)

 日本カーリットの電池試験所危険性評価試験所では、そんな多種多様な電池の特性に応じた性能評価を通して、電池技術の発展に貢献できるよう、日々取り組んでおります。

 今回は「リチウムイオン電池」とはそもそもどんな電池なのか。また、どのようにして私たちの生活に貢献してきたのかについてまとめてみました。

 昨今、リチウムイオン電池に関する報道を目にしない日はないというほど注目されています。つい「リチウムイオン電池」とひとくくりにしてしまいがちですが、報道の中で触れられている電池は具体的にはどのようなものなのか、どんな材料や特性に焦点が当てられているのかといった視点で情報を整理してみると、また違った理解が得られるかもしれません。

 このコラムでは今後も引き続き、リチウムイオン電池の代表的な材料構成、リサイクルなどの周辺技術、ユーザーとして気を付けるべき運用方法、用途に応じた技術的要求事項など、読者の皆さまが電池を理解するうえで役に立つかもしれない「電池のあれこれ」を発信していきたいと思います。

著者プロフィール

川邉裕(かわべ ゆう)

日本カーリット株式会社 生産本部 受託試験部 電池試験所
研究開発職を経て、2018年より現職。日本カーリットにて、電池の充放電受託試験に従事。受託評価を通して電池産業に貢献できるよう、日々業務に取り組んでいる。
「超逆境クイズバトル!!99人の壁」(フジテレビ系)にジャンル「電池」「小学理科」で出演。

▼日本カーリット
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▼電池試験所の特徴
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▼安全性評価試験(電池)
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