式11は、ねじ山に発生する摩擦力だけを考慮していましたが、ボルトの締め付けではボルト頭と被締結体とに発生する摩擦力を考慮しなければなりません。摩擦力の円周方向成分を図11のμbFで表します。
dhはボルト穴径、Doは六角ボルトの場合では被締結体と接している面の外径、六角穴付きボルトの場合ではボルト頭の直径になります。μbFは円周方向に作用するので、その直径Dbを求めなければなりません。Dbは、dhとDoの間にあります。参考文献[2]によると式12となります。
一方、JIS B 1083(参考文献[3])によると式13となります。
ここでは式13を採用しましょう。ボルト頭と被締結体とに発生する摩擦力を考慮したボルト締め付けトルクと軸力の関係は式14となります。
ここまでの解説を読んで、「おやっ? 自分が使っている式やJISの式と違っているぞ」と思われたかもしれません。式を変形していきましょう。式8に戻り、これを上式に代入します(式15)。
式2を使ってβを計算すると、およそ0.05[rad]と1よりもはるかに小さい値となります。このようにβが微小なとき、三角関数は式16で近似できます。ただし、βの単位はラジアンであることに注意してください。
式5において、cos β≅1とすれば、α≅α’となります。せっかく、図7を作図したのに少し残念です。そして、tan βが微小なので式15の分母第2項を無視すると式17となります。
これで、かなり多くの方が使っている式になりましたね。式2を代入すると、αは30度になるので、cos α=0.866を代入すると式18が得られます。
式1を使ってトルク係数を求めてみましょう。
JIS B 1083(参考文献[3])の式になりました。
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