初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。最終回となる第12回は「流体解析」をテーマに、解析ゴールの考え方とメッシュ生成の基礎について解説するとともに、設計者CAEの実践に向けたメッセージをお届けする。
初心者の方を対象に、例題を交えながら「設計者CAE」の実践的なアプローチについて解説してきた本連載ですが、今回でいよいよ最終回となります。
前回の後半部分で「流体解析」を取り上げ、流体の内部空間の定義とサーフェスゴール(解析ゴール:解析が収束する条件)の設定まで行いました。これまで主題として扱ってきた「構造解析」のように、この後にメッシュを生成し、解析を実行するという流れで解析結果を得るわけですが、その前にもう少しだけ“解析ゴール”について説明しておきたいと思います。
今回は「SOLIDWORKS Flow Simulation」を用いた定常流れにおける、解析ゴールについて説明します。
流体解析では、構造解析で“力の釣り合いを解く”のと同じように、流れが定常状態(Steady State:時間が経過しても変化しない状態、平衡状態)になるまで反復計算を行います。その際に必要となるのが、定常状態であるという“判断基準”です。これがなければ反復計算を終わらせることができません。
SOLIDWORKS Flow Simulationには、計算処理を停止する内部基準というものがありますが、そもそも設計者CAEを行う担当者の頭には「どのような状態が定常状態なのか」という想定の基準があるはずです。そのため、筆者としては内部基準に任せ切りにするのではなく、自身で解析ゴールを設定して反復計算を実施すべきだと考えます。
前回「定常解析」と「非定常解析」のお話をしましたが、“流れ”に関しては、時間が経過しても変化がない流れのことを定常流れ(Steady Flow)というのに対し、時間の経過により流れが変化するものを「非定常流れ(Unsteady Flow)」といいます。
【例】
定常流れの場合、最終的な定常状態の結果を得ることが目的となりますが、非定常流れでは、途中経過の結果を得ることにも意味があるため、解析時間を適切な間隔で設定し、計算結果を取得する必要があります。
今回の解析テーマは、前回に引き続き“ノズル先端の均一性の評価”です(図1)。前述の通り、ここでは定常流れの問題として扱い、解析ゴールについては、複数あるノズル先端(流体の出口となる蓋)の面の静圧パラメーターに対して「最大」と「平均」を設定しました(詳しくは前回参照のこと)。
SOLIDWORKS Flow Simulationでメッシュ作成を行う場合、「直交格子メッシュ」がベースとなります。有限要素法では、メッシュ作成について“解析対象を微小な要素の集合体と見なし、これを分割する”としています。
以前行った「SOLIDWORKS Simulation」を用いた構造解析では、四面体のメッシュで要素を分割しましたが、SOLIDWORKS Flow Simulationでは直交格子のメッシュによって、固体と流体が分割されます。また、メッシュ分割によって生成された要素のことを「セル(Cell)=解析領域」といいますが、流体解析には次のようなセルの種類があります。
【流体解析におけるセルの種類】
なお、SOLIDWORKS Flow Simulationでは「界面セル(カットセル)」というメッシュ分割が行われます。このカットセルは、直交格子のメッシュだけでは形状を正しく認識することが難しい曲面や斜めの形状を認識しやすくするためのメッシュ分割方法です。
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