静音性プロペラの設計では先端力学シミュレーション研究所の技術を活用。機体の筐体、モーター、バッテリーについては大型ドローン事業を手掛けるヤマハ発動機の量産経験やノウハウが反映されている。カメラの開発は、旧三洋電機のデジタルカメラ事業部で現在は日本アジアグループ傘下にあるザクティが担当。ACSLとNTTドコモは、ドローンの機体制御を行う中核システムとなるフライトコントローラーや、クラウドシステムへの通信などの開発をけん引したという。
ドローンの操作は、ゲーム機のコントローラーのようなシンプルなUIとしており、各種情報の表示などはコントローラーに装着するスマートフォンを活用する。標準カメラは、ザクティの大口径レンズと独自信号技術により1インチと比較的大きいサイズのCMOSセンサーを搭載できている。切り替え用のカメラとしては、可視光と赤外を同時撮影できるものや、田畑の植生状況の確認に用いられるNDVI(正規化植生指数)測定に対応するマルチスペクトルカメラを用意している。
産業用を含めたドローン市場はDJIをはじめとする中国企業が席巻してきたが、2020年9月に政府がセキュリティを確保した“安全安心な”ドローンを調達する方針を打ち出したこともあり、国産ドローンに注目が集まっている。今回のNEDO事業も、そういった政府方針の一環となるものだ。
会見に登壇した経済産業省 製造産業局 産業機械課 次世代空モビリティ政策室長の川上悟史氏は「本事業は、ベンチャーのACSLが入ったこともあって、2020年5月から1年弱という短期間で機体の開発を完了できた。今後は、フライトコントローラーとドローンのさまざまな部品や機能をつなげるAPIを事業の成果として公開することで、多様なドローン開発につなげ、ひいてはドローン産業を拡大させたい。単に政府調達のためのドローンを開発することが狙いではなく、より多くの方にこの“安全安心な”ドローンを使ってもらってコストを下げ、さらに普及していくというサイクルにつなげたい」と期待を込める。今後のドローンの販売主体となるACSLの鷲谷氏も「政府調達分だけの需要では投資回収は難しい。国内外に広く販売していく必要がある」と述べている。
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